需要予測支援システム「Forecast Pro」
正確な需要予測は、企業活動の幅広い分野に大きなメリットを与える。製造現場では生産計画へのインプット情報や過剰生産を防止する。物流では適正在庫の維持に活用できる。販売の最前線では販売計画や目標管理、ビジネスチャンスロスの抑止に、資材部門では発注計画に、労務部門では人員配置の基礎データとなる。先行き不透明な現在、需要予測は極めて重要な経営データとなっている。
この需要予測のため、中堅の食品メーカー 日東ベスト株式会社様が採用したのが、日立ソリューションズ東日本の提供する需要予測支援システム『Forecast Pro』であった。2008年という早い時期から活用を開始、同社の生産する約4,000アイテムのうち、主流となる7割程度の需要を予測。工場やラインの生産計画に役立てている。人間のできることであれば機械にも可能だ。しかも極めて短時間な上、欠品への恐れなど人的感情が入っていない精度の高い数値を提供する。同社では今後、さらに精度を上げることはもちろん、単品販売予測や工場への人員配置にも役立てたいと抱負を語っている。
【写真】
【写真右】日東ベスト株式会社 生産部 次長 小関 徹 氏
【写真右から2人目】日東ベスト株式会社 生産部 計画管理課 課長 尾形 雅人 氏
【写真中央】日東ベスト株式会社 生産部 計画管理課 佐藤 一博 氏
【写真左から2人目】日東ベスト株式会社 生産部 計画管理課 氏家 仁志 氏
【写真左】日東ベスト株式会社 経理部 情報システム課長 大沼 静哉 氏
小関氏
日東ベスト様の設立は1948(昭和23)年。山形県寒河江市に本社工場を置き、地元の果物缶詰と国産第1号となる瓶詰めコンビーフの製造を開始した。コンビーフは瓶詰めから缶詰へと代わり、その生産量は現在でも日本1位を誇る。果物缶詰も品質が高く評価されているものの、季節性が強い。そこで安定した売上を確保するために着手したのが、冷凍食品の生産であった。
--「当社生産量の約8割が冷凍食品です。他に、外食チェーン店向けの食品、スーパーやコンビニのおにぎりや弁当、さらに学校給食などを手掛けています」と、生産部 次長 小関 徹 氏は紹介する。
働きやすい職場としても知られている。女性は1年から1年半の育休があり、社内保育園も併設し、働く女性を支援している。「男性の育児参加促進事業主」としての取り組みも認められ、厚生労働省から「ファミリー・フレンドリー企業」として表彰を受けた。
--「寒河江市の『神輿の祭典』には30年以上参加しています。地元に密着した地域に開かれた企業です」(小関氏)
神輿の祭典は、4,000名もの担ぎ手が共演する東北随一の神輿まつりとして有名である。また、毎年秋には本社で総合文化祭を開催。社員の作品展示のほか、ソーセージや焼きそばなどの日東ベスト製品の即売会もあり、地元住民に支持されている。夫婦や親子などがともに勤めている、家族的な雰囲気の会社だ。
製造拠点は山形県内に8工場、県外に2工場をかまえ、約4,000アイテムを生産している。これら複数工場の、生産に関するあらゆる業務を統括しているのが、同社の生産部である。
--「生産部の業務は、新商品の開発から立ち上げ、生産の原価管理、品質管理、設備の維持管理、生産計画、大型特注品の緊急対応、ISOの本部機能、工場への人員配置…と多岐にわたります」と、生産部 計画管理課 課長 尾形 雅人 氏は説明する。
計画管理課は全社的な生産計画の立案から工場やライン単位の生産計画の立案を担っている。計画管理課で生産方針とおおまかな計画を立案し、各工場が作成した計画とをすりあわせ、シミュレーションして工場のラインに落とし込んでいく。
--「20年以上前からこの作業をしていますが、10年ほど前からこの作業が膨大かつ複雑になり、とても手作業では限界になりました」(尾形氏)
たとえばトンカツならトンカツ、ハンバーグならハンバーグというように、同じ分類を同じラインで製造する。20年前であれば、5%ほどの狂いもなく前年実績でラインを割り当てることができた。しかし、製品アイテムの増加、お客様のスポット的な特注の増加、商品のライフサイクルの短期化などの理由で、需要が予測できず、生産計画の立案にひどく時間がかかるようになった。市場変化も激しく、前年比30%もの変動も見られるようになり、単品までの需要予測は手作業では不可能になった。
尾形氏
そこで同社が検討を開始したのが、過去の出荷量から今後の需要を予測するソリューションの導入であった。検討を開始したのは2008年のことである。
--「まだ需要予測という言葉が目新しかったころです。『Forecast Pro』は価格的にもリーズナブルで、機能的にもスムーズに絞り込むことができました」と、小関氏は振り返る。
他の製品は、コンサルタント料金や在庫管理機能など、必要以外のサービスが含まれており、価格も高価であった。また、需要予測の手法であるEPA法を検討したが、実績データが2年以上必要などの制約があり、同社にとっては実用的ではなかった。
日立ソリューションズ東日本に実績データを提供しシミュレーションを依頼したところ、精度も良好であった。さっそく2008年9月には1ライセンスを購入し、試用を開始した。
--「良くできているというのが第一印象です。人間が時間をかけて予測するところを、機械は数分で処理が完了します。これならまかせられると確信しました」と、尾形氏も語る。
明確な季節性がある製品など人間のできることは機械で高速処理できる。しかし、大型特注の需要予測など、いくら時間をかけても人間に予測できないことは、機械にも無理である。これはどのようなソリューションに求めても無理だと判断し予測の対象外とした。
佐藤氏
『Forecast Pro』は20年以上やってきた手作業を代替している。計画管理課と各工場の生産計画をすりあわせて、精度の高い生産計画立案を支援している。
--「大幅な時間の短縮になりました。今まで時間がなくてやりたくてもできなかったことが、『Forecast Pro』によって可能になりました」と、尾形氏は評価する。
さらに、今まで困難だった単品管理も可能となった。全4,000アイテムのうち、主流となっている7割程度の単品の需要を予測している。
--「分類ごとのトップダウンと単品ごとのボトムアップを臨機応変に使い分けています。12カ月分を予測していますが、実際の計画に落とし込んでいるのは2~3カ月分です」(尾形氏)
大沼氏
--「さらに『Forecast Pro』の優れている点は、人間の持つ感情を排除し冷静に判断できることです。人間は欠品への恐怖があって、需要予測値に安心在庫を積んで余裕のある設定にしがちです。これも積もり積もると大きな誤差になり、生産過剰となってしまいますと、生産部 計画管理課 佐藤 一博 氏も『Forecast Pro』の効果を補足する。現場での現実的な効果が認められ、追加してライセンスが購入されていった。
--「2011年にバージョンアップとともに1ライセンスを追加購入、さらに2016にもバージョンアップとともに1ライセンスを追加購入し、計画立案の人材育成にも生かしています。」と、経理部 情報システム課長 大沼 静哉 氏は説明する。
氏家氏
システム化に当たった大沼氏は、『Forecast Pro』の可能性に言及する。
--「『Forecast Pro』を独立して使用しているのが現状です。発注管理システムなどとデータ連携することにより、一括発注でき、コストを削減できるのではないかと検討しています」
生産部 計画管理課 氏家 仁志 氏にも今後の展望をお聞きした。
--「より高精度を追求したい。市場や売上製品の変化が激しくなり、予測は困難になっています。だからこそ、グルーピングなど更なるデータの前処理を工夫することで精度を高める工夫が必要です。ぜひトライしてみたいと考えています」
尾形氏は営業サイドの販売予測に活用できないかと期待している。
--「今は生産の視点で『Forecast Pro』を活用していますが、販売の視点での活用も考えています。手掛けてはみたもののまだ道半ばです。私は生産管理なので部門違いですが、再度挑戦してみようと思います」
経営視線から小関氏は人員配置について語る。
--「各工場の人員配置も重要な経営課題です。欲しいときに欲しいだけの人材を簡単に得られる時代ではありません。限られた人員を計画的に必要な工場に充てなければなりません。その計画にも『Forecast Pro』は役立ちます。有効な人材活用はコストダウンにもなります」生産計画はもちろん、販売予測、工場の人員配置においても『Forecast Pro』の提供するデータが期待されている。
最後に『Forecast Pro』を検討中のお客様へのアドバイスを尾形氏にお伺いした。
--「『Forecast Pro』は、当社のようにある程度見込み生産をして、在庫を持たなければいけない製造業には必須のソリューションです。コストダウンにも競争力強化にもなります。導入する価値は十分にあります」と強調した。
社名 |
日東ベスト株式会社 |
---|---|
設立 |
1948(昭和23)年7月 (創業1937年) |
本社 |
〒991-8610 山形県寒河江市幸町4番27号 |
資本金 |
1,474百万円 |
従業員数 |
958人 |
事業内容 |
冷凍食品・日配食品・缶詰・袋詰・チルド・レトルト品食品の製造販売 |
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