需要予測支援システム「Forecast Pro」
2004年から補給部品を対象とした需要予測システムの導入の検討を始めた、いすゞ自動車株式会社(以下、いすゞ自動車)様。
当初は他社と統計解析ソフトをカスタマイズし、需要予測エンジンの独自開発を試みていたが、開発期間の長期化やコストオーバーのため断念。そこで目をつけたのが「Forecast Pro」だった。
需要予測に特化したコンパクトなパッケージソフトを最大限活用することで、開発規模を圧縮。実績のあるソフトを導入することで短期開発、及びリスクを回避。結果、予測精度と高いコストパフォーマンスが評価され、2005年に導入が決定した。
以来約20年もの間、いすゞ自動車様では、補給部品の需要予測・発注業務でのさらなる即納率の向上とバックオーダー(BO)の低減を実現するため継続的な改善に取り組んでいる。その結果、前回インタビュー時より、さらに高いパフォーマンスを発揮するようになった。
一体どのように「Forecast Pro」を運用しているのか。
社会インフラである物流・人流を支えるトラック・バスの稼働確保を目的とした補給部品の安定供給
■ いすゞ自動車株式会社 部品事業部 部長 塙 浩司 氏【写真中央】
■ いすゞ自動車株式会社 部品事業部 グループリーダー 田代 直暁 氏【写真右】
■ いすゞ自動車株式会社 海外部品部 グループリーダー 谷口 健太 氏【写真左】
ISUZU Transformation - Growth to 2030(IX) (中期経営計画)で、お客様及び社会の課題を「安心×斬新」な「運ぶ」で解決する、商用モビリティソリューションカンパニーへの進化を目指す、いすゞ自動車様。
そのためには「『運ぶ』を創造する新事業への挑戦」と同時に、「『運ぶ』を支える既存事業の強化」も求められている。商用車(CV)、小型商用車(LCV)とともに、既存事業の一つとして挙げられるのが“アフターセールス”。
2030年度には、売上高6兆円・営業利益率10%以上を目標とし、既存事業では新車販売85万台以上、売上高5兆円以上を目指している。これらの目標を達成するためには、売上の2/3を占める海外市場でのアフターセールス強化が求められている。
現在、海外市場での稼働保証体制強化を目的に、現地の需要予測・発注計算業務・システムの構築に取り組もうとしている。ベースとなるのは、導入から20年に亘り国内での需要予測において大きな成果を上げている「Forecast Pro」だ。
塙 浩司 氏
--「2004年、当時の社長 井田義則からお客様への部品供給性の向上のため目標として『BO件数の半減』を命じられ、『新需要予測』プロジェクトが発足」
--「当初は統計的分析に経験則を加えて部品をカテゴライズし、カテゴリ毎の需要予測ロジック構築をスクラッチ開発にて試みるも、開発期間が長引きコストもオーバーし、暗礁に乗り上げました」
そう話すのは部品事業部 部長 塙 浩司氏。
プロジェクト当初から参加している、補給部品のプロフェッショナルだ。
--「まずは汎用ソフトから始めようと『Forecast Pro』を試してみました。当時使っていた移動平均法だと需要傾向を把握できず、欠品や過剰在庫が発生していました。まずはこれらを解消することが重要でした」(塙氏)
--「ただし最初から『Forecast Pro』に切り替えてしまうと、『Forecast Pro』の利点・欠点がわかりません。そのため、4ヶ月間ぐらいは移動平均法とForecast Proの予測値を並べて表記する等をして本当に当たっているか、予測の傾向等を目視でチェックしていました。
現在、『Forecast Pro』の導入を検討している方々には、全体の予測誤差率で判断するよりも個々の予測と実績の適合具合を確認して評価したほうがいいと思います。特にForecast Pro導入で解決したい問題点、例えば当社では季節変動部品などを重点的にチェックしておくべきです。
全体で見て予測と実績の誤差が少なくても、個別のケースでの誤差が大きかったら、実際に導入してから困ることが多いと思います。
すべての品目を『Forecast Pro』のみで管理するのは困難です。需要のブレが大きすぎるものや受注がめったにない低頻度の部品など、はなから当たらないものは予測しないと見切りをつけることが肝です。『Forecast Pro』の予測特性を把握し、どのアイテムが管理可能か、しっかり評価して導入したほうが、スムーズに移行できると思います」(塙氏)
--「2006年2月から本格導入して効果はすぐ現れました。数カ月で即納率98%、BO件数半減を達成しました。高頻度部品はリードタイムも3~4週間なので、導入して1カ月ぐらいで期待以上の成果が出ました。この時点では、高い即納率と在庫ミニマム化との効率運営を目指していました。
しかし、東日本大震災によるサプライチェーンの崩壊を経験し、お客様の稼働を止めないためにも在庫はある程度持っていたほうがいいといった考え方に変えました。いかなる環境下においてもお客様の稼働を最大限守るべく、低頻度部品の供給改善にも着手しました。
当時、年間受注件数が2件以上の部品のみ在庫をしていましたが、低頻度部品についても過去3年間の受注実績を見て、年単位での受注の連続性・増減、修理メニューに応じて、部品を分類し、稼働を守ることを重視した新たな低頻度の基準を策定、細かく仕組化したことで市場ニーズに合致した在庫配置が実現しました。
その結果、即納率は99%、BO件数は8,000件⇒2,000件に大幅に削減し、お客様の期待により応えられるようになりました」(塙氏)
細かく仕組化することで、人手が増えたり手間がかかったりするようなことはなかったか、塙氏に伺った。
--「逆です。細かく仕組化するのは大変でしたが、仕組化により工数を抑えながらも最大限の効果を発揮することができています。
大半の部品に関しては『Forecast Pro』の予測を信頼し、効率的に運用しています。但し、供給・在庫に影響を与える可能性の高い部品については、しっかり人がチェックするようにしています。そのメリハリが最も重要だと考えています」
そのメリハリに関しての考えが最も現れているのが異常値への対応だ。
--「平滑係数(注:0に近いほど受注実績全体を考慮しており、1に近いほど直近の受注実績を重視していることを表す指数)レベルオーバーなどについては、受注の増減のバックボーン(特需など)まで確認して対応しています。但し、当初は他にも多くのアラート、例えば予測モデルが変化(需要動向が変化)したらアラートを出すようにしていましたが、対象が多すぎる・効果が少ないものはForecast Proに任せることにしました。
全てのアラートを潰すのがベストですが、Forecast Proの弱点を集中的に人が確認することで限られた人員で業務を行い、現在では弊社の補給部品供給レベルは業界内でもトップクラスにあります」(塙氏)
田代 直暁 氏
2030年に新車販売台数85万台を目指す、いすゞ自動車様では、海外でのアフターセールス事業にも力を入れている。部品事業部 グループリーダー 田代 直暁氏はこう話す。
--「海外でも日本国内同等の補給部品供給レベルにし、お客様の稼働を支える体制を構築することが我々の使命です。その一環として、日本国内の需要予測・発注システムをベースとした海外向け業務・システムの構築を進めています。
海外では各国でバラバラな業務・仕組みで運営されており、情報入手も満足にできず、サプライチェーン全体の供給・在庫状況を把握できていません。まずはこれらの情報収集のためのネットワークを作り、各国の需要・在庫・発注等の情報を可視化し、その情報を元に補給部品の供給・在庫を管理していきます。
これを実現するために、活用するのが『Forecast Pro』です」
谷口 健太 氏
海外プロジェクトのリーダーである海外部品部 グループリーダー 谷口 健太氏に話を伺った。
--「いすゞ自動車では特に、ASEAN、中近東、アフリカに注力しており、アフリカの主要拠点であるケニアから海外向け業務・システムの構築を開始しようとしています。
日本国内向けでの需要予測に関しては、『Forecast Pro』が大きな成果を上げていますので、同じように世界各国の需要予測も『Forecast Pro』で行い、日本国内同等の補給部品供給レベルを目指します」
最後に、これからの日立ソリューションズ東日本に期待することを伺った。
--「季節変動部品等は移動平均法で処理するとBOだらけになってしまいます。しかし『Forecast Pro』を導入してから、特に季節変動部品や需要急増部品にタイムリーに対応できるようになり、BOを大幅に削減できました。以前は、需要予測や季節変動部品等の目視での確認のため専任の担当者が10名近くいましたが、現在は4~5名に減りました。それも皆さん、ほかの業務と兼任です。
次に日立ソリューションズ東日本に期待するのは、数十年単位の長期の需要予測です。電動化やカーボンニュートラルの流れで、部品メーカーによっては事業方針も変わり、内燃機関を構成する部品の継続生産が困難なケースも発生し始めています。しかし我々としては、20年、30年と補給部品を販売しなくてはなりません。そのタイムラグの間の需要予測をどうするか、ぜひ一緒に検討していきたいですね」(谷口氏)
旧型の半導体等も入手しづらくなっている。長期需要予測はいすゞ自動車様にとって喫緊の課題だろう。
また田代氏は以下の要望を挙げる。
--「海外では商習慣、気候等が各国で異なり、使われ方も異なる。そのため、キャンペーンなどの営業施策、新車導入計画などの過去実績以外の情報・データも入手・活用して、需要予測に反映させたいです。現地の人から入手したこのような情報を加味した上で、きめ細やかな対応ができると嬉しいですね」
いすゞ自動車様の需要予測に対する継続的な改善への取り組みはこれからも続きそうだ。
社名 |
いすゞ自動車株式会社 |
---|---|
創業・創立 |
1916年・1937年4月 |
資本金 |
40,644百万円 (2025年3月末現在) |
代表者 |
代表取締役 取締役会長 CEO 片山 正則 |
売上高 |
連結:3,208,084百万円 |
従業員数 |
連結:42,117人 |
主要製品 |
大型・中型・小型トラック、バス、自動車用ディーゼルエンジン、産業用ディーゼルエンジン |
本社 |
〒220-8720 神奈川県横浜市西区高島一丁目2番5号 横濱ゲートタワー |
事業内容 |
自動車、輸送用機械機具、原動機等の製品、およびその部品、ならびに関連する資材・用品の製造・販売 |
その他、デモ・トライアル・導入相談など、お問い合わせも受け付けております
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