需要予測コラム
需要予測の能力の有無が、企業の競争力を大きく左右します。商品が売れるとわかったら大量に生産あるいは仕入れて、たくさん売って儲けます。売れないと読めたら在庫を引き締めて、損を出しません。これさえできれば厳しい競争の世界で、ライバル企業に抜きん出ることができます。逆に需要予測ができなかったために衰退し、消え去った企業が数限りなくあることでしょう。
この需要予測で必須となるのが、需要予測モデルやシステムを活用するためのスキルです。私たち日立ソリューションズ東日本は、需要予測ソリューション「Forecast Pro」の提供を開始して23年以上になり、豊富な導入経験と活用のノウハウを持っています。そのノウハウの1つに、需要予測システム活用における「予測適用可否判断、つまり予測が可能なら商品と予測が難しい商品の仕分け」の重要性があります。需要予測システムのメリットを最大限に生かすには「商品の仕分け」が欠かせません。今回はこの商品の仕分けに必要な「予測誤差」と「予測モデル」について解説します。
「需要予測システムを使うことで生産量や発注量を最適化できる」とささやかれると、多くの人は心が揺さぶられます。需要予測に対する期待が大いに高まるのです。これに水を差すようですが、あくまでも需要予測システムは、人間に代わって需要を予測するものであり、神のように未来を創造するものでありません。
これまでの需要予測は、人間のカンと経験に頼ってきました。カンは測定しがたい能力であり、継承も困難です。これに対し経験は、長く積めばそれだけ先が読める熟練者になっていきます。需要予測システムとはこの熟練者の「経験」を統計的にモデル化したものです。
今まで、熟練者が言葉で表したり、伝えたりすることのできなかった経験則を機械化したものなのです。需要予測は人間(熟練者)の能力を超えるものではありません。人間(熟練者)の手作業を機械化し、効率化するものです。
熟練者に豊富な経験が必要なように、需要予測システムには豊富な過去の販売実績データが必要になります。季節変動を折り込むには、一般的には2年以上のデータが必要となり、3年4年分があれば精度が高くなります。1年に1回程度しか出ない商品では、予測が困難です。
また、流行に左右されたり、サイクルが短い商品も予想が難しくなります。これに対し、頻繁に売れてきた定番商品で威力を発揮するのが需要予測システムです。
需要予測システムの能力を最大限に活用するために必要なことは何でしょうか。それは「商品の仕分け」にあります。
当たる商品と当たらない商品を仕分けて、当たる商品に需要予測システムを適用していきます。需要予測システムに向いている商品を探し出し、適用しなければなりません。
売れている商品であれば、データ量が充実していることから、需要予測システムの精度の高くなます。ほとんどの企業は売上数の上位2割の商品で、売上高の8割を占めているといわれています。いわゆるニッパチの法則です。この上位2割の商品に需要予測システムは適しています。
商品の仕分けは、ABCDランクで分類します。ここで利用されているのが次の「予測誤差」と「予測モデル」です。
予測誤差とは、需要予測システムによって算出された「予測値と販売実績データの差」のことです。
予測誤差は割合(%)で一覧にし、順位付けを行います。
誤差が10%以内は極めて精度の高い需要予測値です。続く10~20%も、信頼に値するレベルです。
20~30%になるとやや怪しくなってくるものの、頼りにできる数値ではあります。多くの場合、これら上位の商品で売上の大半を占めます。
図1 予測誤差0~30%であれば信用に値する
予測モデルとは需要予測するための統計手法のことです。図2のように「Forecast Pro」には充実した予測モデルが搭載されており、高度なものからシンプルなものまであります。「Forecast Pro」が自動的に選択しますが、調整することも可能となっています。
図2の上位6モデルの(〇)が、季節性やトレンドがある場合に適用され予測精度が期待できます。下4つの(×)は不規則な動きをするモデルで、予測精度は期待できません。(△)の2モデルはその中間となっています。
図2 予測モデルと予測に適するかどうかの一覧
図3 予測誤差と予測モデルの表
予測誤差と予測モデルの2つを紹介しましたが、この2つを合わせてマトリクスにしたのが【図3】です。
この表から次のようなABCDランクを読み取り、次の生産計画あるいは発注計画の参考にしていきます。
予測自動化推奨【Aランク】 |
需要変動の動きを捉え測精度の高い(30%以内)商品群です。 |
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在庫調整要【Bランク】 |
予測精度は30~50%以内であまり高くありません。 |
予測対象外推奨【Cランク】 |
予測誤差が大きく需要予測には不向きの品目です。需要予測は参考情報、もしくは需要予測を使わず発注点法がMinMax法などで在庫管理が必要な商品群です。 |
アラート要【Dランク】 |
需要傾向が取れない予測が困難な商品で、余剰在庫や欠品が生じる危険性があります。 |
図4 予測誤差率と欠品率の関係
「予測誤差」と「予測モデル」によって商品を仕分けることをご理解いただけましたでしょうか。
次に問題となるのが、どのような範囲でランク付けするのかという点です。10%までの誤差がいいのか、30%までで十分なのでしょうか?
10%まで絞ると極めて高精度な予測が可能となりますが、対象となる商品が限られてきます。30%にすると欠品の危険性は高まりますが、対象となる商品が増えてきます。
このような際に参考にできるのが「図4 予測誤差率と欠品率の関係」です。例えば、在庫日数30日分を保持している場合、30%の誤差率とすることで、欠品率を5%以内に抑えることができます。この表をもとに、社内で試行錯誤し最適な値を設定することをお勧めします。
精度の高い需要予測には商品の仕分けが重要となりますが、これは初回だけではいけません。1カ月に1回など、定期的な見直しが必要となります。見直しとは、需要予測システムの出したABCDランクに変動はないかということ。そしてその変動の理由はどこにあるのかということです。
需要予測システムは過去の販売実績データに基づいて予測しますが、この過去の販売実績データに異常値(外れ値)が入っていると、需要予測に悪影響を及ぼします。今までAランクだった商品が需要予測不能なCランクにいきなりダウンすることがあります。
例えば、スポットで大量注文が入った場合、需要予測システムはその大きな変動に規則性を見つけ出すことができなくなり、需要予測不能と判断してしまうのです。このケースで必要となるのが、「Forecast Pro」に読み込ませる過去データのクレンジングです。
クレンジングとは「Forecast Pro」が需要予測を間違えないよう、過去データを修正することです。「Forecast Pro」には自動クレンジング機能を用意していますが、目視してから必要に応じてクレンジングすることをお勧めします。
商品の仕分けの例として、いすゞ自動車株式会社様の「Forecast Pro」活用事例を紹介しましょう。同社サービス部品部門に導入されており、同部門で管理する部品が20万点近くに及ぶことから、人間系での予測と発注処理が困難となり、「Forecast Pro」を活用することにしました。
同社では毎週「Forecast Pro」に実績データを転送し予測値を計算させています。
また、1カ月に1回、定期的に商品仕分け用のマトリクスを作成し、需要予測対象となる商品の仕分けをしています。
A・B・C・Dの4ランクに分類していますが、同社がここで注目しているのが、A・BからC・Dランクにダウンした商品です。A・BからC・Dランクにダウンしたからといって、決して売上がダウンしたわけではありません。需要予測の精度がA・BからC・Dランクにダウンしたに過ぎません。
同社では、C・Dにダウンした理由を探って、クレンジングをかけ、「Forecast Pro」の出す予測の精度に保っています。
図5 いすゞ自動車株式会社様の「Forecast Pro」活用事例
いすゞ自動車株式会社様など、需要予測の事例について過去に実施したオンラインセミナーの動画がございます。
さまざまな企業での需要予測の事例がございますので、合わせてご確認ください。
その他、デモ・トライアル・導入相談など、お問い合わせも受け付けております
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