需要予測コラム
需要予測とは、自社の提供するプロダクトやサービスの短期的あるいは長期的な需要を予測するものです。需要予測は仕入れ、生産、販売、人員配置、設備投資、資金調達などの計画策定を大きく左右し、企業活動の根幹に関わる極めて重要な業務となっています。
それにもかかわらず、需要予測は従来の数値を踏襲したり、経験や慣例を重視しがちでした。しかし、グローバルでの競争が激化し、さらにリードタイムが短くなろうとしています。コスト競争も激しく、需要予測の判断ミスは、ビジネスチャンスのロスや過剰在庫につながりかねません。企業の利益最大化のためには、精度の高い需要予測が不可欠です。
現在、企業には長期の販売データが蓄積されるようになっており、これらをベースにした需要予測が可能になっています。今回のコラムでは、この需要予測の必要性、目的などの基礎についてご紹介します。
需要者の要求納期に余裕がある場合は、受注してから、製造業では生産を開始し、流通業では製品の調達をかけることができます。しかし納品までのリードタイムが短縮化される傾向にあり、見込み生産や見込み調達を避けることができなくなってきています。
ここに需要予測の必要性があります。あらかじめ売れる量を見越して、生産したり、調達したりするのです。
需要予測の立案には大きく営業側と需給調整側の2つの立場があります。
営業側にありがちな課題として、売上予測の精度が低いことが上げられます。例えば、営業はビジネスチャンスのロスを恐れるため、必要以上の生産や在庫の確保を要求します。また営業は、目標達成の数値があるために目標に即した過剰な数値となります。これでは需要予測ではなく、営業目標に過ぎません。
さらに、営業担当者は細かな製品品目の意識が希薄な傾向にあり、グロスで売上目標が達成すればOKと考えています。会社側も目標金額さえ達成できていれば、評価するからです。
営業の売上予測とは別に、需給調整部門(生産・調達部門も含めて)が営業の売上予測を受け取って需要予測を立案している企業もあります。この場合は、営業の売上予測は参考データとなります。
営業の売上予測を生産側で精査するわけですが、その売上予測がおおまかな場合があり、個々の製品に落とし込むのに時間がかかります。数個から数十個のように品目数が少なければいいのですが、それが数百数千品目になると、同じ精度で生産計画を立てることが困難となります。
ABCランクの主要Aランク品だけに注力し、数の多いBランクCランク品が疎かになってしまうケースが多く見られます。時間がかかるだけではなく、不注意からミスも発生します。生産や調達ミスは経営にも大きなインパクトを与えます。膨大な品目の正確な予測は、人間系だけでは限界があるのです。
需要予測に高度なノウハウが必要とされることから、属人化されていることがしばしばあります。
ベテランが担当し、そのベテランの退職は会社にとって大きな痛手となります。異動もままならず、新人は即戦力にならず、人材流動の硬直化の原因にもなります。
特に外資系の企業などでは多いのですが、フォーキャスターと呼ばれる専任の需要予測担当者が、需要予測の根拠の資料として需要予測システムのレポートを使用していることがあります。不確かな勘や経験に頼ることなく、確固としたデータの推移から需要の予測をしていることを証明しているわけです。
上記でも紹介したように、需要予測は次の2つが大きな目的です。
1:工場での生産量を最適化する(製造)
2:調達量を最適化する(流通)
これ以外にも、需要予測システムは次のケースでも必要となります。
製造業やその販売店では、保守部品の確保が必須となります。
製品を販売すると、保証期間として3年から5年は修理用の保守部品を確保していなければなりません。トラックなどの輸送機器になると、20年以上保守部品を確保する必要があります。これを怠るとお客様満足度が著しく下がり、リピート購入につながりません。ここで問題となるのが確保するべき保守部品の総数です。
製品数が数百であればストックするべき保守部品は数万から数十万に及びます。とても人間系で管理できる品目数ではありません。過不足のないよう、需要予測システムによる生産や調達管理が必要となります。
生産に必要なのは部品や材料だけではありません。生産に関わる人も必要ですし、設備も必要です。
工場出荷や倉庫出荷の量を予測して、必要となる人員や設備を、あらかじめ整えて置かなければなりません。
需要予測システムを利用して、必要となる人員や設備の確保を計画します。
人間系に頼ることなく、需要予測システムとPOSシステムを連動させ、しきい値を超えた商品を自動発注するシステムも見られます。ホームセンターや食品スーパーなどではPOSシステムからリアルタイムに販売データを収集し、必要となる量を自動算出し、在庫を切らすことなく店舗に補充できるようにしています。数十店や数百店の規模となると、発注担当の手間が膨大となり、これを大幅に省力化できます。
医療やセキュリティで使用される備品や消耗品も需要予測システムにより、発注がかけられます。医療では治療薬や検査薬が必要になりますし、セキュリティではセンサーや監視カメラなどが必要になります。
社会インフラとなる電力、ガス、水道なども過去の消費量予測や気象情報から、供給計画と設備計画を立案しています。とりわけ、電力の供給不足は大きな問題となることから、極めて高い精度での予測が求められています。
金融機関では振込件数の予測から、人員計画を立案しています。突然発生した天災などの募金キャンペーンでは、振込件数が突発的に跳ね上がるため、慎重な計画と展開が必要です。また、海外ではATMにストックする紙幣の量に需要予測システムが利用されているケースがあります。
ご覧いただいたように、需要予測は幅広い業種・業態で利用されており、いずれも人間系を超える精度が求められています。これらに対応するのが日立ソリューションズ東日本の提供する需要予測支援ソリューション「Forecast Pro」です。10種類の予測手法群(指数平滑法、ボックス・ジェンキンス法、離散データモデル、簡易モデル、クロストン周期性モデル、類似モデル(新製品の予測)、単純移動平均法、曲線近似法、バスモデル(新製品の予測)、動的回帰分析)を持ち、データの傾向から、最適な予測手法を自動選択し、予測モデルを構築します(エキスパート選択機能)。
世界の40,000ユーザ以上の先進企業で採用されており、極めて高い精度を提供しながら、幅広い現場で使いこなすことでできる容易な操作性を持っています。これら各種機能の詳細やメリットを次回から紹介いたします。
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