工程管理・プロジェクト管理業務を効率化する
プロジェクト管理システム「SynViz S2」
「赤字プロジェクトの撲滅」を掲げて、SIベンダ各社が競ってプロジェクトマネジメントツールの導入を急いだのは2000年前後のことである。収益率がギリギリとなり、大きな赤字プロジェクトの発生が、企業の業績に大きく影響するまでになったからだ。
それから数年を経て、さらに新たな課題が浮かびあがってきた。プロジェクトの複雑化、大規模化、短期化が進み、チーム別マネジメントからプロジェクト全体の迅速な把握が必要になったのである。
そこで、株式会社日立製作所 情報・通信システム社(以下、情報・通信システム社)は プロジェクトマネジメントのさらなる改善に着手。
工程管理のガイドラインを整備すると共に、日立ソリューションズ東日本の提供する次世代プロジェクト管理統合プラットフォーム『SynViz S2』を導入した。
左:株式会社日立製作所 情報・通信システム社 生産技術本部 基盤開発部 技師 生田 英明 氏
右:株式会社日立製作所 情報・通信システム社 生産技術本部 基盤開発部 担当部長 中村 満明 氏
生田氏
日立製作所はカンパニー制を導入しており、社内カンパニーとグループ会社合計約40社によるスピーディな企業運営を展開している。今回『SynViz S2』を導入した情報・通信システム社は、6社あるカンパニーの1つであり、総勢数万人に及ぶ極めて大規模なSE集団だ。
『SynViz S2』を推進しているプロジェクトマネジメント統括推進本部と生産技術本部は、プロジェクトを管理・運営する「プロジェクトマネジメント技術」、高品質・高生産性を目指す「ソフトウェアエンジニアリング技術」、技術・知識共有を推進する「ナレッジマネジメント技術」などの手法や基盤を提供し、プロジェクトを成功に導くためのサポートをミッションとしている部門である。
情報・通信システム社のようなSE集団にとって、プロジェクトマネジメントは不可欠であり極めて重要となる。工程管理ツールは早くから導入していたが、その多くは部門単位であったり、プロジェクト単位であったため、統一されていなかった。さらには、お客様ごとにツールや管理方法も異なっていた。
--「各社ごとにまちまちの状態で、同じプロジェクトを構成しているにもかかわらず統一ルールでマネジメントしようとすると煩雑なやり方になってしまうことがありました。そこで、情報・通信システム社はもちろん、グループ会社を含めたプロジェクトマネジメントの統一基盤を推進することになったのです」と、生産技術本部 基盤開発部 技師 生田 英明 氏は振り返る。
もちろん、経理や受発注管理など事務処理は、全社的にプロセスもツールも整備されていた。だが、情報・通信システム社およびそのグループ会社の統一されたプロジェクトマネジメント基盤が定着するまでには至っていなかった。 そこで当時のCEOのコミットメントを得て横断的なワーキンググループを立ち上げて取り組むことになった。
中村氏
プロジェクトマネジメントはSEの個性や能力に左右されやすい分野の1つで、それだけに標準化は簡単ではない。そこで、2009年からワーキンググループを中心に、それまで現場で培われ、現場の暗黙知として一子相伝されてきた工程管理のさまざまなベストプラクティスを収集し、整理・体系化して工程管理のガイドラインとしてまとめた。また、対象となるSEの数はグループ各社も含め数万人に及ぶため、ツールなしに標準化の定着は困難と判断し、2008年から統一して利用できる工程管理ツールの選定に入った。
--「実にさまざまなツールを使っていました。業界のデファクトスタンダードもありましたし、お客様ごとの特殊なツールもありました。Excelもかなり使われていました」(中村氏)
データの一元管理、わかりやすい操作性、コストパフォーマンスから見て、候補に挙がったのが日立ソリューションズ東日本の提供するプロジェクト管理システム『SynViz/SD』(選定当時。現在は、SynViz S2に統合)であった。
--「高いレベルの柔軟性がありました。加えて、日立グループ内のツールを育てブラッシュアップすることで、グループの財産になる。」と中村氏は語る。
情報・通信システム社とそのグループ会社が取り組むには『SynViz/SD』が最適と考えた。
事業部長会議を経てグループ展開の許可を得て、1年ほど準備を進め、2009年から部分的に使用を開始。以降、順次水平展開を進め、先述のワーキンググループで、活用を推進。手順、改善要望などを出しながら運用している。2013年にはクラウド版の『SynViz S2』に移行した。現在は日立グループ48社で展開している。
--「ボトムアップでこの種類のツールを浸透させていくのは極めて難しいと思います。自分で使いやすいと思えるツールに走ってしまいがちですが、会社のお墨付きということでスムーズに水平展開できました」(中村氏)
新システムの導入により、それまでSE個々や部門単位で使用していたツールが統一され、誰もが同じ操作性でプロジェクトを迅速、正確かつ詳細に確認できるようになった。プロジェクトの再配置や担当の異動があっても、ツールの操作に戸惑うことがない。
インターネットあるいはイントラネットに接続できる環境であれば、どこからでもプロジェクトの進捗を確認できる。出張先やお客様先からアクセスして、すぐに状況を報告したり登録したりすることも可能だ。もちろん、セキュリティを維持する仕組みが用意されている。
--「情報の収集と集計が大変楽になりました。瞬時に報告書を作成できますし、複数のプロジェクトの進捗状況を一覧にできます。大規模プロジェクトではかつてはExcelに報告書をまとめるのに相当の工数を要していましたし、異なるフォーマットをExcelで集計するのに専任の担当者をおいていました。しかし、今では簡単に見える化できています」と、生田氏は効果を強調する。
すでに昔とはプロジェクトのスピード感覚が変わっている。より大規模で複雑なシステムを、従来よりも短期間で構築しなければならない。短納期化でスピードが求められ、工程管理に時間をかけることが許されなくなったともいえる。
同社では現場利用者にアンケートを実施したが、精度や鮮度の向上、作業負荷の軽減など7割のSEが効果ありと答えている。
また、インターネット上でのサービスも提供されたことで、海外のオフショア先への展開も可能になった。情報・通信システム社はもちろん、グループ会社、さらには海外の協力企業など、ワールドワイドなプロジェクト展開が想定される。それだけに『SynViz S2』を提供している日立ソリューションズ東日本への期待と責任は大きい。
--「今後もユーザ視点に立って、継続したエンハンスと安定運用をお願いしたい」と、最後に中村氏は要望した。
社名 |
株式会社日立製作所 |
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設立 |
1920(大正9)年2月1日 |
本社 |
〒100-8280 東京都千代田区丸の内一丁目6番6号 |
資本金 |
458,790百万円 (2013年3月末日現在) |
従業員数 |
33,665人(連結ベース 326,240人) [2013年3月31日現在] |
事業内容 |
1910年に茨城県日立市で創業。情報・通信システム、電力システム、インフラシステム、建設機械、高機能材料、オートモティブシステムを中心とする分野で事業を展開し、IT(情報技術)で高度化された社会インフラを提供する「社会イノベーション事業」を世界各地で推進しています。 |
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