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生産スケジューラとは?生産管理システムとの違いや「使える」ために必要な要素も解説

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生産スケジューラとは、生産計画を作成する際に人材や設備、時間など細かい部分まで計画に組み込めるツールです。
生産管理システムよりも細かい粒度で計画を立てられるため、製造現場などで利用されています。生産スケジューラを利用して生産計画を作成することで、原料調達から出荷までの各工程の効率化や、納期に向けて確実なスケジュールを立てやすくなります。
そのため、「納期を遵守できないときがある」、「生産における各工程の連携がうまく取れない」、「生産計画を表計算ソフト(Excel)で立てている為、時間がかかりまた属人的な計画となる」といった悩みを抱えている企業には最適のツールになります。

本記事では、生産スケジューラの必要性やメリット、実際に導入する流れなどを解説します。導入を検討している方は、本記事の内容を通して導入を検討しましょう。

スケジューラとは

スケジューラとは、スケジュールを管理する仕組みのことです。
具体的には、企業活動の一環として経営資源の効率的消費や活動を目的に将来の予定を立案する仕組みなどのことを指します。

スケジュール管理の項目は、納期やタスク、進捗状況、人材のスキルレベルなど多岐にわたるため、優先度を設けるなどの仕組みが出来上がっていないと、スケジュール管理を最適化できません。スケジュール管理の最適化ができないと、「納期までに間に合う予定が組めない」「生産予定に対して、欠員などのイレギュラーが発生した際に混乱する可能性が高くなってしまう」といった問題が発生するでしょう。
そのため、納期を遵守するのはもちろんのこと、その日程に合わせて柔軟に生産できるような環境を作るうえでも、スケジューラは重要な役割を持ちます。

生産スケジューラとは

生産スケジューラとは、生産工程におけるスケジュール管理を効率よく実施するための仕組みのことです。
生産計画などを立案できるシステムのことも生産スケジューラと呼びます。生産スケジューラを導入することで、過去の実績や現状のリソース(人や設備)などを踏まえた精度の高い生産計画を作成することが可能です。

例えば、人や設備に対して使用可能な工数や納期を考慮したうえで割付(例:作業計画などの割付)できる機能などがあり、この機能を利用することで自動的・効率的に計画を作成できます。他にも、企業独自の段取りパターンをツールに盛り込むことで、自社の生産面での特徴を考慮した精度の高い計画の立案も可能です。
自身で生産計画を作成すると、属人的な計画により、生産リソースの活用が出来ない計画や実行可能性が低い計画、また非効率な計画になってしまうことも珍しくありません。しかし、生産スケジューラならそういったリスクを最小限に抑えられます。

生産管理システムとの違い

生産管理システムとは、原料調達から出荷までの生産業務を一元管理できるツールです。生産管理システムと生産スケジューラはともに生産工程におけるスケジュール管理や、生産計画の立案・作成をする点においては同じ役割を持ちます。異なる点は、生産計画の「粒度」です。

生産管理システムは生産に関わる全体の業務を包括的に管理できます。それに対し、生産スケジューラは使用する設備や人員、作業時間といった細かい粒度で生産計画を立案することが可能です。
具体的には、「どの設備や道具を使用して、どの担当者が、何時何分何秒に、どのような作業を実行するか」といった粒度での立案が実現します。そのため、生産スケジューラは生産計画をより細かく立案したい現場管理者や現場担当者に適しているでしょう。

Excelで自作したスケジューラでも問題ない?

企業によっては、表計算ソフトであるExcelを使用してスケジューラを自作しているところもあります。Excelでも、自社が求めるスケジュール管理を実施できるのであれば問題ないでしょう。とはいえ、生産スケジューラの方がスケジューリングに特化した機能を付帯しているため、Excelと違ってスケジュール管理の標準化などに期待できます。

例えば、Excelだとマクロ等で魔改造したものを利用しているのが原因で、特定の人しかスケジュール管理ができない業務の属人化が発生しやすいです。しかし、生産スケジューラを利用すればツール内のフォーマットを利用するため、業務標準化の助けにもなり、効率良くスケジュール管理を実施できます。
さらに、生産スケジューラの自動計画機能を活用すれば、スピーディーに計画を立案できるため、Excelでの作成と比べて計画作成業務の大幅な時間短縮も実現します。管理項目が多くて計画作成に時間がかかっている、過去の実績から受注予測を立てるのが面倒、といった場合には生産スケジューラの方がおすすめです。

なぜ生産スケジューラが必要なのか

生産スケジューラは製造業において、統制力や競争力の維持・向上をする上で必要となるツールの一つです。
その理由として、人件費や原料費の増加、働き方改革による(残業時間など)勤務時間制約などが挙げられます。経費の負担が増える一方で、負担分を売価に思うように転嫁できず、利益が減少する企業が増えており、ムダな在庫は企業の負担(在庫保管費用の負担や死蔵化・廃棄コストの負担など)をさらに増やす要因となっています。

生産スケジューラを利用すればムダが生じるような生産計画を立てることがなくなるため、例えば余剰在 庫の圧縮などに繋がり、経費も 削減できるでしょう。経費を削減した結果、利益の維持・増加に繋がり、各社との競争で生き残っていける可能性が高まります。なお、生産スケジューラを利用することで、下図における「6つの経営課題」を解決することが可能です。
6つの経営課題を解決するための9つの施策は生産スケジューラの機能を駆使することで実施できます。そして、6つの経営課題を達成すると、結果的に売上の向上と経費・費用の削減が実現するため利益のアップに繋がります。

生産スケジューラのメリット

生産スケジューラを導入するメリットは以下のとおりです。

【 生産スケジューラのメリット 】

  • 作業時間を細かく管理できる
  • リソースを適正化できる
  • 作業の属人化を解消できる
  • 受注・売上の増加が見込める
  • 費用削減に期待できる

生産スケジューラを利用することで、生産管理システムよりも細かい粒度で生産計画を作成できます。秒単位・分単位で作業時間を管理できるだけでなく、設備や人などのリソースを適切な位置に配置して、それぞれの適正化を図ることも可能です。
さらに、生産スケジューラは過去の実績などの情報をもとに予測を立て、最善のスケジューリングを自動で行なってくれます。自動で行うことによって計画作成者の主観が入ることがなくなるため、属人化が解消し、客観的かつ効率的なスケジューリングが出来るでしょう。

作業時間を細かく管理できる

生産スケジューラによって、生産における各工程のスケジュールを秒単位・分単位で計画・立案することが可能です。
例えば、「誰がどの機械に配置されて、何時何分何秒にどの作業を開始するべきか」といった計画を立てられます。これにより、短納期への対応や、急な受注への対応の場合でも、細かな振り分けで納期を遵守したスケジューリングができます。
さらに生産スケジューラの種類によっては、後作業の段取・切り替えの適正化や人材の熟練度といった細かな条件を加えることも可能です。
条件をもとに効率的な計画を立案してくれるため、各生産拠点において独自に考慮する制約などが存在する場合でも、自社にマッチしたスケジューリングが行なわれます。

リソースを最適化できる

生産スケジューラでは、細かな時間管理とともに、設備や人員といったリソースの適切な配置も可能です。
現時点での人員や設備の状況を踏まえ、最適な生産計画を立案するため、ムダな配置がされることはありません。また、生産スケジューラの立案によってリソースの最適化が行なわれると、各従業員の業務負担の偏りを改善することもできます。
生産スケジューラの「最適化」は優秀な人材に業務を集めることではなく、リソース全体のバランスを考慮したうえで納期を守れる効率的な計画を立てることです。業務負担の偏りが改善されれば、企業への人材の定着率にも良い影響を与えるでしょう。

作業の属人化を解消できる

生産スケジューラは、マスタ情報をベースにできるだけ理想に近い計画を自動的に立案するため、主観を交えた計画を立てることがなくなります。もし、Excelを使用して生産計画を立案した場合、作成した担当者の主観が入り込んでしまい、属人化の要因にもなります。
なぜなら、Excelであると自由度が高すぎ何を基準に計画を作成したのか立案者以外の他の人が分からず、別の担当者では修正ができないためです。その点、生産スケジューラなら生産管理システムから情報を受け取って自動で計画を立てるため、主観が入りませんし、システムを利用すればだれでも同じ基準で計画を作成・修正することが可能です。

受注・売上の増加が見込める

生産スケジューラを利用することで、受注数や売上の向上が見込めます。 その理由として、以下3つの経営課題を解決できる点が挙げられます。

【 受注・売上の増加につながる経営課題 】

  • 新規顧客獲得
  • 顧客満足度向上による客単価の増加
  • スループット増大

生産スケジューラは納期の遵守や小ロットへの対応など、顧客の要望に柔軟に応えられる生産計画を立案するのに適しています。
その結果、小ロット対応などの要望を持つ新規顧客への対応や、既存顧客の要望への柔軟な対応が実現し、新規顧客獲得や既存顧客の単価増加といった売上の増加が見込めるでしょう。

費用削減に期待できる

生産スケジューラは費用削減にも期待できます。その理由として以下3つの経営課題を解決できる点が挙げられます。

【 費用削減につながる経営課題 】

  • 人件費削減
  • 在庫費用削減
  • 投資・借入の適正化

生産スケジューラでは、在庫推移計画を行うなどにより過剰在庫の発生を防ぐことが可能です。また、ムダな製造をしないことによる人件費の削減、在庫数の適正化による保管費用の削減といった効果が見込めます。
製造業においてムダの削減は特に重要な活動の一つとして考えられているため、現状に多くのムダが発生している悩みを抱えている場合には、生産スケジューラの導入価値はさらに高まるでしょう。

生産スケジューラの注意点

生産スケジューラは、あくまでツールであるため適切な方法で使用しないと効果を発揮しません。
例えば、常に最新の情報をツールに入れられるようにしておく、ツールの使用方法を熟知した人が使用する、といったルールや環境を設けておくことで生産スケジューラの効果を発揮できます。また、生産スケジューラの導入に伴って、企業全体の理解も必要です。

導入することによって自動で生産計画の立案が行なわれ、この際、属人的なスケジューリングからも脱却することになるため、生産スケジューラが立案する計画精度が高ければ計画担当者の大幅な計画工数の削減や職務の見直し・改善が図れる可能性があります。
急な変化は、従業員の抵抗感を生む要因にもなりかねないため、前もって告知しておくなど、理解してもらえるように努めましょう。

生産スケジューラを導入しても上手く活用できないケース

生産スケジューラを導入したにも関わらず、うまく活用できないケースもあります。考えられるケースは以下のとおりです。

導入目的が明確になっていない
目的が明確になっていないことによって「ツールを導入しただけで実際に活用できていない」といった状態になってしまう。
導入目的が明確になっていれば、使用する機能等を絞ったうえで効率よくツールを使用することが可能。
ツールを運用できる人材が揃っていない
ツールの使用方法を理解している人が使用しないと、スムーズな運用ができない可能性がある。
誰でも利用できるようにマニュアルの作成や運用ルールの策定など、ツールの利用に際して必要な情報を明確にして共有しておくことが重要。
自社にマッチしたツールを導入していない
自社にマッチしたツールとは、「求める機能が搭載している」「導入コストに見合った成果が見込める」といったツールのことを指す。
求める機能が搭載されていないツールを導入しても、効率化や利益向上の効果は見込めない。
運用ルールが曖昧
運用ルールは、「最新の情報を定期的にツールへ取り込む」「利用方法が記載されたマニュアルを手元に置いて活用する」などのルールが挙げられる。ルールを明確にしておくことで、ツールの効果を発揮しやすくするとともに、新しい担当者がツールを使用する際の基準にもなる。

これらのケースを避けられれば、生産スケジューラを効果的かつ効率よく活用できるでしょう。
導入したものの正しく活用できない事態を避けるためには、次項で解説する「導入の流れ」に沿って導入を進めることを推奨します。

生産スケジューラを導入する流れ

生産スケジューラを導入する流れは以下のとおりです。

【 生産スケジューラを導入する流れ 】

  1. 生産管理の課題を明確にする
  2. 運用チームや人員を策定する
  3. 生産スケジューラの選定
  4. 運用ルールの策定

まずは生産管理における課題を抽出し、明確化するところから開始します。課題を明確にした結果、生産スケジューラ導入に価値を見出し、導入すること自体が決定したら運用チームを構築しましょう。
そして、運用チームも含めて導入するツールの選定を行い、そのツールの導入・構築を行います。そのツールに合わせた運用ルールを作成後、実際にツールを使用し運用を開始します。導入するまでの準備をしっかりと行い、土台を固めてから導入することが大切です。

生産管理の課題を明確にする

生産管理の課題を明確にすることで、解決すべきことと導入目的が明確になります。導入目的が明確にならないと、運用チームの方針が曖昧になって業務効率が低下する可能性があります。ツールを選定する際も、目的に合わせた選定をしないと自社にとって価値のないツールを導入することにもなりかねません。また、課題を明確にしたい場合は「KPIの設定」をすることが大切です。

例えば、「納期遵守率を○○%とするや在庫削減率を○○%とする」などの具体的な目標値があれば、現在の発生率はどのくらいなのかを知る必要があり、その結果、発生率を抑えるためには現状どのような課題があるのかを明確にできます。
課題が明確になれば、解決を目指して具体的な計画を立てることも可能です。定期的に納期遵守率を記録し把握すれば、目標の達成に向けて正しく進んでいるかを把握できるでしょう。

運用チームや人員を策定する

課題が明確になり、導入が決定したら運用チームや人員を策定します。誰でもツールを利用できる状態にするのではなく、チームを作ることによって各メンバーの役割や権限を明確にして、各担当者が効率良く業務にあたれるようにしましょう。

例えば、今までスケジュール管理をしていた人や現場管理を任されている人などのアドバイスを活用することで、生産計画の情報を守ることの重要性を理解しているはずなので、ルールに則った運用がしやすくなります。また、無制限にシステム利用ができる環境になると情報が流出する可能性や、ルールを守らない人が発生する可能性が高くなります。
ルールを厳守するには、チームを作って携わる人数を絞ることでリスクを軽減させることが重要です。

生産スケジューラの選定

チームや人員の策定が完了したら、そのメンバーを含めて導入する生産スケジューラを選定しましょう。
選定する際は、自社にマッチしたツールを導入するためにも以下の点を考慮したうえで選定を実施してください。

【 生産スケジューラを選定する際に考慮すべきポイント 】

自社の製造現場に適しているか
場合によっては、管理する粒度が細かすぎると計画を調整する量や頻度が増えてしまって、メンバーがツールを使いこなせなくなる可能性がある。
自社が求めるスピード感で情報の追加や変更が行われるか
設備不調や部品調達ミスなど不測の事態が発生した場合に、迅速な計画変更等が行われるか。
また、そのスピードは自社の業務スピードにマッチしているか。
サポート体制は充実しているか
チームを組んでいたとしても、導入後すぐに使いこなせない可能性もある。
そういったケースでは、サポート体制の充実度が、導入後スムーズに運用できるかどうかを左右することになる。
提供形態はどれが適しているか
クラウド型やオンプレミス型などの提供形態があり、導入コストを抑えたい場合にはクラウド型、拡張性を重視したい場合にはオンプレミス型が適している。

生産スケジューラの種類は豊富にあります。自社にマッチしたツールを選定できなければ、導入価値が低くなってしまうため、考慮するべき点を押さえた上で運用チームを含めて検討することが大切です。

運用ルールの策定

運用ルールを策定することで、現状把握の簡易化やセキュリティ対策の向上、引継ぎがしやすくなるなどのメリットが生まれます。
もし運用ルールを策定しなかった場合、チームメンバーによる情報漏洩の危険性の増加や運用効率の低下に繋がる可能性が高いです。
また、運用ルールが策定されているかどうかは、ツールの利用者が安心して使用できるかどうかにも影響します。ルールが決められていれば、その範囲内での業務に徹することができるため、利用者は不要なことを考えずに業務にあたれます。運用効率の向上や情報漏洩の防止の観点から、運用ルールは必ず策定するようにしましょう。

まとめ

生産スケジューラは、生産工程におけるスケジュール管理を効率よく実施するのに効果的な仕組み・ツールです。
生産管理システムと違って、細かい粒度で生産計画の立案ができます。具体的には、分単位でのスケジューリングや設備・人といったリソースの配置の適正化などが可能です。
ただし、生産スケジューラはあくまでもツールであるため、運用チームや運用ルールの策定をしたうえで導入しないと効果的に活用できません。ただ便利なツールを導入するといった理由で導入するのではなく、KPIに基づいた改善を図るなど 明確な目的を持ったうえで導入するようにしましょう。

※Excelは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。

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