機械学習によるデータ分析ツール「uniSQUARE ML」
データ分析を難しいと考えていないだろうか。データ分析の重要性は認めているものの、専門知識が必要で、ハードルが高いと思われているかもしれない。
企業内にはすでに多くの経営データが蓄積されている。DX(デジタルトランスフォーメーション)が潮流となって、それらデータを分析することで、業務の変革や新たな価値の創造が求められている。だが、多くの企業ではどのようなデータ分析ツールを選べばいいか分からないし、導入したツールのスムーズな活用に不安を抱えている。
ペットフードのパイオニア、日本ペットフード株式会社(以下 日本ペットフード)様では膨大な量のアンケート結果をもとに顧客像のクラスター化を検討していた。そこで導入したのが日立ソリューションズ東日本の提供するデータ分析ツール『uniSQUARE ML』であった。ツールの使いやすさや求める効果が得られそうだというツール自体の評価に加え、選定の最大の理由は、日立ソリューションズ東日本の担当者が問い合わせに丁寧に答え、疑問点にも素早く回答してくれたこと。きめ細かなサポートやアドバイスもあった。同社ではデータ分析結果を商品リニューアルに活用し、対象商品の売上2期連続二桁成長を達成するなど、業績向上に貢献している。
■ 日本ペットフード株式会社 営業本部 マーケティング部 アシスタントゼネラルマネージャー 津々樂 仁美 氏
■ 日本ペットフード株式会社 営業本部 マーケティング部 リーダー 齋藤 洸 氏
齋藤 氏
コロナ禍によって在宅時間が増えたこともあり、日本のペットフード市場は確実に規模を拡大させている。
60年ほど前、国内にこのペットフード市場を切り開いたのが、現在の日本ペットフード様である。同社の発売したドッグフード「ビタワン」が日本初のペットフードであった。
以来、同社はペットフードの研究・開発・販売を続け、代表的なものに、ロングセラーのビタワンのほか、コンボ(犬・猫用)、スイミー(鯉用)、ラビットフード(ウサギ用)、エンゼルBreak(カメ用)、犬・猫用機能性フードビューティープロなどがある。
--「犬、猫はもちろん、金魚、ウサギ、カメなど、ペットフードの総合メーカーです。静岡県にペットフード専用の自社工場と研究所があります」と、営業本部 マーケティング部 アシスタントゼネラルマネージャー 津々樂仁美 氏は説明する。
同社の企業理念は「私たちは心のふれあいを大切にし、ペットフードを通して家族とペットの生活に、憩いと潤いを提供します。」というもの。ペットに関わる産業を「心の産業」ととらえているのである。
津々樂 氏
--「私たちは提供しているペットフードの味に絶対の自信がありますので、ペットには必ず食べてもらえるものと確信しています」と、津々樂氏は断言する。
静岡の研究・開発部門では多数の犬と猫と小動物たちがスタッフとして活躍しており、試食を重ねながら製造している。それら犬と猫にそれぞれ名前をつけて可愛がっているほどだ。
--「ところがこの業界の大きな特徴の1つに、ペットフードを食べるペットと、買い手であるお客様(飼い主)が異なるということがあります。ペットはものを言うことができません。当社はお客様視点に欠けているのではという不安がありました」(津々樂氏)
そこで同社が着手しようとしたのが、買い手である顧客像の明確化であった。それまで顧客像は、性別や年代別等に分類しているものの、収集したデータを有効活用できてない面もあった。
ペットに焦点を当てるのではなく、購入者である飼い主に焦点を当てること。これは同社にとっては極めて大きなチャレンジであった。
--「お客様像をクラスター化して、商品開発やお客様アプローチに活用したいと考えていました。パーソナライズです。それを商品開発や販売戦略に活かしていきます」と津々樂氏はゴールを語る。
この作業で不可欠となるのがデータ分析だ。しかし、同社にはデータ分析の経験者も専門知識を持っている社員も少なく、専任の担当者もいなかった。ここで白羽の矢が立ったのが、営業本部 マーケティング部 リーダー 齋藤 洸 氏であった。齋藤氏は小売や卸などの流通を経験しており、購入者に接したことがあった。顧客視点を持っている数少ない人材であった。
購入者に接したことはあっても、やはりデータ分析の経験も知識もない。統計解析の勉強に着手すると同時に、データ分析にはITの力が不可欠として、ITツールの候補選びに着手した。
データ分析用のツールは極めて豊富に提供されている。最も身近なのがエクセルだが、クラスター分析には機能不足であった。OSSのRやPythonなどの言語もあるが、柔軟性は高いものの、プログラミング経験のない齋藤氏にはハードルが高かった。
専用ツールとしては帳票系、RDB系、さらにはエンタープライズ仕様など多くの種類が用意されている。ここで最適なゾーンに入っていたのがIBM SPSS Modelerであり、それをOEM製品として提供している日立ソリューションズ東日本の『uniSQUARE ML』であった。
--「当社の分析ニーズに即したツールを特定できましたが、今度はそれを販売しているパートナー企業の選定が必要になりました」と、次のステップを齋藤氏は説明する。
同じ製品を販売する代理店でも、価格や提供するサービス等が各社で準備されていて全く異なる。
専門の分析技術者を派遣するサブスクリプションサービスになると高額で費用対効果を考えると即決はできない。齋藤氏はスタンドアローンによる買取契約ときめ細かなサポートを望み、これに対応しているのが日立ソリューションズ東日本であった。
--「『uniSQUARE ML』であれば、データ分析の経験や専門知識がなくても、ゴールさえ分かっていれば成功できると判断しました。さらに日立ソリューションズ東日本は営業もSEも説明が丁寧で初心者でも分かりやすい。製品も企業も信頼することができました」と、齋藤氏は選定の理由を語る。
同社では購入者へのアンケートを実施しておりその質問項目は37個、すでに数千件のデータが蓄積され、データ分析の母数としては十分な量になっていた。手始めに着手したのはこのアンケートデータによる、顧客層のクラスター化であった。
分類のために複数の基軸を設け、1つの軸はペットに対する愛情のかけ方、ペットに求めている役割や価値、具体的には犬であれば番犬として外で飼っている飼い主もあれば、同じ屋根の下で溺愛している人もいる。健康面での切り口もある。他の軸としては、どれほどの費用をペットにかけているかで分類した。
--「縦軸と横軸それぞれ3分割し、当社のお客様像を計9分類にクラスター化しました。さらにこのクラスターに当社製品を配置し、関係者で共有しています。当社社員も暗黙知としてお客様像を分かっていましたが、ここまでビジュアル化して示されたことがありませんでした」と、分析データの活用方法を津々樂氏は示す。
--「『uniSQUARE ML』はこのクラスター分析のモデルが予めいくつか用意されており、自動分類結果を分かりやすい形で瞬時にビジュアル化までしてくれます。プログラミング知識がなくてもノードアイコンを繋ぎ合わせることで、分析結果を簡単に導き出すことができます」と、『uniSQUARE ML』の優れた操作性を齋藤氏は評価する。
『uniSQUARE ML』導入による大きな効果として、商品購入者である飼い主を視野に入れた活動ができるようになったことがある。
例えば、商品企画の会議では、どのクラスターをターゲットにするか明確にして議論できる。販売戦略でも、どの顧客層にどのようにアプローチしていけばいいかを、具体的な数字データをベースに話し合うことができるようになった。
--「『uniSQUARE ML』は何倍とか何パーセントとか、解析数値が明らかにされます。その数字をベースにして議論するようになりました。これは当社にとってとても大きな変化だと思います」と『uniSQUARE ML』導入の効果を齋藤氏は語る。
顧客目線になったこと、数字をベースに議論できるようになったこと。これらは風土改革といってもいいかもしれない。
--「目に見える効果としては業績アップがあります。『uniSQUARE ML』導入後にビューティープロのリニューアルがあって、その際にどの層を狙うのかターゲットを明確にしました。2021年のリニューアル後、市場売上データにおいて2期連続二桁成長を達成しています」と津々樂氏は業績アップを認める。コスト削減にも貢献している。
--「社外の調査機関に頼むと、1回の分析で数十万円が必要になります。『uniSQUARE ML』を利用すると分析の度に費用を支払わずに済みますし、切り口を換えて何度でも分析ができます。これは『uniSQUARE ML』を購入して本当に良かった点です」と津々樂氏も齋藤氏も笑顔を見せる。
もっとも、今回の活用で満足しているわけではない。
--「まだ単発の活用に過ぎません。スポットではなく、サイクルで分析・検証を繰り返す仕組みに取り組んでいきたいと考えています。IDPOSデータも取り組むことができ、併売の傾向を掴むことで一緒に陳列する商品を提案できるようになると考えています」と、齋藤氏は意欲を見せる。
全社での『uniSQUARE ML』の活用を考えていると津々樂氏は抱負を語る。
--「当社には生産開発・営業・管理の3部門があり、それぞれの部門で『uniSQUARE ML』が活用できると思います。独立して専任者を置くのではなく、業務を知っている人間に分析させたい。そうしないと温度差が出てしまい狙った効果を期待できません」というのである。
データ分析というと数字にのみとらわれがちであるが、同社の企業理念に変化はない。
--「ペットフードは『心の産業』であるということを忘れてはいません」と津々樂氏は強調する。
日本企業はものづくりにおいてこれまで、「いいものをつくる」ことを大切にしてきた。現代ではその信念に加えて、ものづくりや販売戦略のためにもお客様への理解が不可欠となってきた。ここで求められるのが、企業内に蓄積されている経営データの分析だが、中堅・中小企業ではスキルとコストがハードルとなる。これらを日本ペットフード様は鮮やかに解決し、データ分析ツール導入の好事例となった。
社名 |
日本ペットフード株式会社 |
---|---|
設立 |
1963(昭和38)年12月24日 |
本社 |
〒140-0002 東京都品川区東品川2丁目2番4号 天王洲ファーストタワー5F |
資本金 |
1億円 |
事業内容 |
ペットフードの製造・販売 |