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第4回 需要予測の手法
「カニバリゼーションや地域性を加味して需要予測の精度を高める手法」

需要予測支援システム「Forecast Pro」

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精度の高い需要予測は企業にとって非常に重要な業務の一つです。企業は適切なタイミングで商品を市場に流通させて売上や利益を最大化するのとともに、過剰な生産による不良在庫を抱え込まないように施策を打っていかなければなりません。そのために大切なことはいくつもありますが、カニバリゼーションや地域性を加味した需要予測も重要です。

カニバリゼーションとは、自社の2つの商品がお互いに売上を奪い合ってしまうことを指します。ある商品の販促キャンペーンを打ったときや新商品をリリースしたときなどに発生しがちです。このカニバリゼーションを考慮せずに過去の実績をベースに需要予測を立ててしまうと、予定外の在庫を抱えることになってしまうことがあります。また、同じ商品であっても地域が異なれば、需要の高い時期が異なることがあります。
たとえば冷房器具の場合、一般的に沖縄や九州といった気温の高い地域のほうが北海道や東北といった気温の低い地域よりも、需要の高まる時期が早いとされています。このような地域性を考慮することで、精度の高い需要予測となります。

今回はカニバリゼーションや地域性を加味することで需要予測の精度を高める方法やForecast Proの操作イメージを紹介します。

カニバリゼーションや地域性を考慮せずに需要予測することでよく起こる問題

カニバリゼーションや地域性を加味しないで需要予測すると、予期せぬ問題が生じることがあります。
実際、どのような問題が起こるのでしょうか。

【カニバリ】これから需要が落ち込む商品が過去の実績通りに売れるように見えてしまう

まず前提として、需要予測は過去の売上実績や受注実績などから将来的な予測を立てるものです。
たとえば、350ml缶と500ml缶の商品を市場に投入している飲料メーカーがあるとしましょう。この2つを商品レベルで需要予測する場合、350ml缶と500ml缶のそれぞれが過去にどれだけ売れたかというデータをもとに、今後の予測を立てることになります。
過去の実績からすれば、350ml缶には月間7000万本、500ml缶には月間3000万本の需要があるというように見込めるわけですね。こうした見込みが立てば、これに合わせて生産計画を練ることができます。

ところが、あるとき350ml缶の販促キャンペーンを展開したとしましょう。これによって350ml缶の需要が高まることは想像に難くありません。月間7000万本と見込んでいた需要が1000万本増えて8000万本になる可能性があるということです。
このとき500ml缶の需要がそのまま3000万本あると見込んでしまうと問題になることがあります。そもそも350ml缶と500ml缶では飲料自体が同じであれば、ユーザー層は一部重複することがあります。そのため、販促キャンペーンによって350ml缶の需要が高まると、その分だけ500ml缶の需要が抑えられる可能性があるのです。つまり350ml缶が500ml缶の売上を奪ってしまうカニバリゼーションを起こした状態となります。

このようにカニバリゼーションを考慮せず、単純に過去の実績だけをベースに需要予測をしてしまうと、これから需要が落ち込む商品が過去の実績と同様に売れるように見えてしまいます。その結果、過剰な生産につながって在庫が積み上がっていくことになってしまうのです。

【地域性】地域の違いによる需要の高い時期を予測できず欠品や過剰在庫につながる

商品には地域によって需要の高まる時期が異なるものがあります。わかりやすいのが農薬です。
稲作を例にしましょう。米を栽培する場合、一般的に九州や四国といった暖かい地域では3~5月に田植えがおこなわれ、東北や北海道といった涼しい地域では6~7月に田植えがおこなわれます。地域によって田植えの時期が異なるということは、その後の栽培スケジュールも異なるということです。ですから、同じ農薬Aという商品であったとしても、地域によって需要が高まる時期が異なるということになります。

そうであれば、農薬メーカーはどの地域で、いつごろ自社の農薬の需要が高まるかを予測しなければなりません。こうした地域性を考慮しないと、地域の違いによる需要の高い時期を予測できず、欠品や過剰在庫を抱えるリスクが高まってしまいます。

カニバリゼーションや地域性を加味した予測の実例

単純に過去の実績をベースにするのではなく、カニバリゼーションや地域性を考慮した需要予測の実例を紹介します。

カニバリゼーションを加味した予測の実例

カニバリゼーションを考慮して精度の高い需要予測をするには、商品をいくつかに分類・グルーピングしたうえで階層構造としてとらえるのが有効です。

先ほど紹介した飲料メーカーの例であれば、トップ(最上層)から「ビール全体」→「チャネル」→「容器」→「SKU(最小単位)」に並べた階層を作成しました。


需要予測の手法としては、「SKU(最小単位)」のレベルでそれぞれの需要を予測して足し算をすることで「容器」レベルの需要を予測。
次に「容器」レベルの需要を足し算することで「チャネル」レベルの需要を予測。さらに「チャネル」レベルの需要を足し算することで、「ビール全体」の需要を予測するといった方法があります。
このようにボトム(最下層)から予測した数値を積み上げていく手法は、一般的に「ボトムアップ型予測」と呼ばれます。

ボトムアップ型予測には現場の需要を予測に反映しやすいなどのメリットがあります。その一方でカニバリゼーションを考慮に入れた需要予測はしづらいというデメリットがあることは否定できません。最下層のSKUレベルでバラバラに過去実績から需要予測するため、350ml缶のキャンペーンを打って需要が高まることが予測できても、それが500ml缶の需要減少の予測につながりづらいのです。
そうなると、500ml缶を過去の実績から予測することになってしまうため過剰生産や過剰在庫につながりかねません。


カニバリゼーションを加味して精度の高い需要予測をするのに用いたい手法が「トップダウン型予測」です。まず「ボトムアップ型予測」とは逆に、需要傾向を把握しやすい上位階層で需要予測し、ボトム(最下層)へ按分していくのです。

たとえば、トップ(最上位)の「ビール全体」からトップダウン予測する場合、「容器」レベルで缶ビールが月間1億本の需要があると予測が立ったとしましょう。また、過去の実績で350ml缶と500ml缶が7:3の比率で需要があったとします。350ml缶に7000万本、500ml缶に3000万本の需要があるということですね。
その後、もし販促キャンペーンによって350ml缶の需要が8000万本に高まることが予測されるのであれば、500ml缶の予測を2000万本に下げて8:2の比率で按分して需要予測を立てれば、カニバリゼーションをできるだけ起こさない需要予測になり得ます。
このようにトップ(最上位)で全体の需要を予測して下の階層に按分していくことで、販促キャンペーンといった過去の実績とは異なる条件が入ってきた場合にもトレンドをとらえやすくなり、精度の高い需要予測を立てることができるのです。

地域性を加味した需要予測の実例

地域性を加味して精度の高い需要予測をするときにも、やはり階層構造を作成するのが有効です。

たとえば、農薬メーカーであれば、トップ(最上位)に「全国」を置き、各地域を表す「散布エリア」をボトム(最下位)に起きました。
農作物は地域が異なれば栽培をはじめる時期も異なります。そのため同じ農薬Aであっても地域によって需要の高まる時期に違いがあるのです。
こうした地域性を考慮せず、トップ(上位)である「全国」のレベルで全体の需要を予測して、ボトム(下位)である「散布エリア」に割り振る「トップダウン型予測」を試みても精度が上がらず、商品の欠品や過剰在庫を招くことがあります。

地域性を加味して需要を予測するには「ボトムアップ型予測」が有効です。「北海道」「東北」「関東」などの散布エリアごとに、各時期や季節の需要を予測。それを積み上げることで全国での需要を予測します。こうすることで、地域による需要の高まる時期・季節性を加味した精度の高い需要予測となります。

Forecast Proでの操作イメージ

Forecast Proでは、非常に簡単な操作で意図通りの需要予測設定ができます。

まずは左サイドの「ナビゲーター」部分をご確認ください。「Region1」の下に「Product1」「Product2」「Product3」「Product4」「Product5」の5つが設定されています。つまり、「Region1」が上位、「Product1~5」が下位の階層構造になっているということになります。

次に「グラフ1」の部分には、「Product1~5」それぞれの需要予測を積み上げて合計した「Region1」全体の需要予測が示されています。
つまり、ボトムアップ型の需要予測によって算出された数値が表示されています。(※折れ線グラフの各色は以下を示しています)

  • 縦線から左側の黒線:過去の実績
  • 縦線から左側の赤線:過去の予測値
  • 縦線から右側の赤線:未来の予測値
  • 縦線から右側の青線:未来の予測値に対する想定されるブレ幅

このボトムアップ型で精度の高い需要予測ができている場合は、そのまま運用を続けていくことができます。
一方、予測精度がなかなか上がらない場合は、別の需要予測法を考えなければなりません。今回はボトムアップ型よりもトップダウン型のほうが予測の精度が上がりそうだと考えられたと仮定します。
その場合は「Region1」をクリック→「予測モデル」→「グループレベル」→「トップダウン」を選択します。Forecast Proではこのような簡単な操作によって、意図通りの予測設定に変更できます。

Forecast Proを使うメリット

Forecast Pro導入の大きなメリットは、精度の高い予測方法発見の効率化や簡便な予測調整です。

精度の高い需要予測方法を最小の時間で見つけられる

需要予測は過去のデータを基に将来的な売れ行きを予測するものです。考え方としてはシンプルだと言えるでしょう。
しかし、どのような階層構造で予測をおこなうのか、トップダウン型で予測すべきか、ボトムアップ型で予測するのかなど、精度の高い予測方法は人間が試行錯誤しながら見つけていく必要があります。

こうした試行錯誤はExcelを使っておこなうこともできます。しかし、関数の入力や複数データの統合などを手作業でおこなうため効率が悪く、新商品の投入やキャンペーンの展開、顧客の購買傾向の変化などに、素早く対応できない可能性があります。また、Excelではそもそも単純な移動平均や回帰分析やおこなえるものの、カニバリゼーションや地域性を加味した需要予測をするのが難しいという面もあります。
Forecast Proであれば、精度の高い需要予測方法を効率よく設定することができます。

営業サイドの予算と対比しながらの需要予測の調整ができる

需要予測で算出された数字が、営業サイドの予算や肌感覚と必ずしも一致するとは限りません。営業サイドには、「今期はこれくらい売りたい」という目標や、「経験上、これくらいは売れるはず」という感覚があるからです。

そうだとは言え、営業サイドからの数字をそのまま受け入れてしまうと過剰在庫を抱えるリスクもあります。したがって、過去のデータを基に算出した数字に、営業サイドから提示された数字を加味して需要の予測を調整していく作業が必要になるケースが多々あるのです。
再び、先ほどビールメーカーの例に戻りましょう。

上記のように階層の形成とグルーピングをして、トップダウン型予測をすることで精度の高い需要予測を実施できました。
ところが、営業サイドが最上位階層である「ビール全体」の数値を、過去のデータによる需要予測よりも多く提示した場合、営業サイドが提示した数字も考慮して、下の階層である「チャネル」、その下の階層である「容器」、最下層である「SKU」の数字を調整して妥当性のある数字であるかを検討しなければなりません。
Forecast Proであれば、上位階層の数字を変えれば自動的に下位階層の数字に反映されます。逆に下位階層の数字を変えれば自動的に上位階層に数字が積み上がっていきます。そのため、営業サイドからの予算と対比しながらの需要予測の調整がしやすいのです。

日立ソリューションズ東日本のエンジニアが入って導入前後の支援・サポート

精度の高い需要予測を実現するには、今回のコラムで紹介したカニバリゼーションや地域性といった内部要因、外部要因を考慮した階層構造の作成やグルーピングが必要です。ただ、こうした設定は試行錯誤をくり返しながら見つけていかなければなりません。
日立ソリューションズ東日本は、お客様が精度の高い需要予測をするための、Forecast Pro導入前後の支援・サポートをおこなっています。

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