デジタル化と業務効率化プラットフォーム「AppSQUARE」
電子決裁が注目を集めている。2020年になって世界的な感染症パンデミックに陥り、多くの日本企業がリモートワークへの転換を進めている。ここで大きなハードルとなったのが、業務遂行に残っている紙伝票の存在であった。すでに多くの業務はシステム化され、標準化や効率化が進められてきたが、決裁のワークフローは紙に頼りがちであった。ハンコも依然として多く使われている。ワークフローの電子化は早くからあったが、ボトルネックが残っていたため、スムーズな決裁を妨げていた。
ここにおいて全社横断の電子承認基盤として期待されているのが日立ソリューションズ東日本の提供する業務アプリ構築基盤『AppSQUARE』だ。トヨタ自動車北海道様では、経費、購買など業務システムの電子決裁基盤として『AppSQUARE』を採用。「要件定義の段階で画面イメージを確認できるので驚いた。パッケージだからコストを削減できる。強力なエンジンを搭載し、安定した電子決裁を実現している」と高い評価をいただいている。 苫小牧、川崎、札幌の3拠点での地域分散プロジェクト推進となったが、SaaS版『AppSQUARE』で懸案管理をスムーズに遂行。ウイズコロナやアフターコロナに対応できる、リモートワークにおけるシステム開発の成功事例ともなった。
■トヨタ自動車北海道株式会社 経営管理部 システム企画G 千葉俊則 氏
千葉氏
トヨタは国内に多くの生産拠点をもっているが、北海道ではトヨタ自動車北海道様が唯一の工場となる。ハイブリッド トランスアクスル、オートマチックトランスミッション(AT)、CVT、トランスファーなどを生産し、国内のトヨタ、日野、ダイハツはもちろん、世界中の工場に供給している。道内製造業で最大規模、用地面積31万坪、年間売上が1,813億円を誇り、全社員約3,400名のうち、技能者は約3,000名に及ぶ
これら駆動系部品はクルマの部品の中でも高度な技術が要求されることから、同社では「世界トップクラスのユニットメーカー」を追求している。例えばATは、約500点もの部品から構成され、クルマの燃費や乗り心地、走行性能などに大きな影響を与えるキーユニット(基幹部品)である。
--「トヨタ自動車100%出資ですが、独立した法人です。グループの『北の戦略拠点』に位置付けられています」と、トヨタ自動車北海道 経営管理部 システム企画G 千葉俊則氏は強調する。
部活動としては、サッカー部、野球部、駅伝・陸上長距離部、アイスホッケー部があり、いずれも地域の強豪だ。また、1991年の設立当初から環境保全活動や緑化活動に努めており、日本緑化センターの『緑化優良工場等表彰』会長賞、北海道経済産業局の『緑化優良工場等北海道経済産業局長表彰』、『北国の省エネ・新エネ大賞』節電部門、開発・製造・普及部門などを受賞している。
--「以前の決裁システムは、当社の創業20周年を機に基幹システムを刷新した際、2012年に構築したものです」と千葉氏は経緯を説明する。
2年をかけて同社ではホストシステムを廃して、基幹システムをオープン化させた。基幹システムの周辺には複数の業務システムがあり、これらシステムを横断する決裁システムを構築した。それまで個々のシステムに閉ざされていた決裁のフローを外出しして、共通する基盤としたのである。
しかし、ほどなく各種業務システムの規模は膨らみ、従業員も決裁する人数も増加した。フローも複雑化し、あまりに膨大な処理量にシステム性能が限界となってしまった。
--「サーバの保守切れも迫っていたため、決裁基盤の刷新を考えるようになりました」(千葉氏)。
紙の帳票も多く残っていることから、ペーパーレス化を視野に入れ、新たなソリューションを検討することになった。
何社かのベンダーに相談したが、その1社に日立ソリューションズ東日本があった。
--「基幹システムの1つとして利用していた会計システムにFit-ONE(現 FutureStage)があり、その縁で日立グループとはお取引がありました」(千葉氏)。
2017年から検討を開始し、日立ソリューションズ東日本から業務アプリ構築基盤『AppSQUARE』の提案を受け、採用に傾いた。
--「『AppSQUARE』採用の理由は大きく2つあります。最も大きいのは『AppSQUARE』の高速開発です。こちらで既存の画面や紙伝票を示すと、翌週には画面のプロトタイプが上がってきます。ちゃんと機能し、上流工程で仕上がりイメージを確実に掴むことができました」と千葉氏は認める。
ドラッグ&ドロップで画面イメージを簡単につくることのできるのは、『AppSQUARE』の大きな特長の1つだ。
--「2つ目がパッケージであること。紙の帳票を簡単に電子化できます。スクラッチではその都度に設計や製造の工程が必要で、時間もコストもかかります」(千葉氏)。
パッケージであることから、構築コストもリーズナブルであり、運用コストも旧システムと比較して大幅に削減できる。
--「日立ソリューションズ東日本の自社パッケージですから、システムがブラックボックスにならない点が選択理由として大きく、他の提案と比較して信頼感がありました」と千葉氏は評価する。
2018年7月に『AppSQUARE』の採用が決定し、11月から要件定義を開始、構築を本格化させた。
この開発において、特徴的だったのがトヨタ自動車北海道本社の苫小牧、日立ソリューションズ東日本の東京事業所(川崎)と北海道事業所(札幌)の3カ所で分散して進めたことだ。トヨタ自動車北海道様も日立ソリューションズ東日本もSkypeの利用を開始したタイミングだったことから、試験的にオンラインで確認しながら開発を進めようということになった。
--「『AppSQUARE』には懸案管理機能が搭載されており、フォームを作成してクラウド経由で毎週課題の解決を進めることができました。資料の共有や、ミーティングの席での画面の作り直しも遠隔地から行うことができました」と、千葉氏は振り返る。
2019年3月に納品し、4月から移行支援、稼働開始は2019年5月20日からのことである。
新システムが対象としているのは、購買システム、共通システム、経費システム、出張システム等でシステム数は合わせて71本に及び、社員3,000人が利用する大規模システムであった。
--「期待どおりに稼働しています。十分な品質と性能です」と、千葉氏は微笑む。
iPhoneによるリモート決裁も大きな効果である。
--「こちらから出した要望です。上位の決裁者はほぼ全員がiPhoneを携帯していますので、出張移動中や在宅勤務など時間や場所を問わず、会議の前後等、すき間時間を決裁承認に充てられるようになりました。決裁のリードタイムが削減されたと現場から歓迎されており、上司にも好評です」(千葉氏)。
コスト削減も期待どおりである。構築コストは予定予算内に収まっており、年間の運用コストも削減ができている。
2020年12月、新機能のリリースがあったが、東京から苫小牧を遠隔でサポートし、コロナによる緊急事態宣言のさなかにもかかわらず、問題なくリリースに成功した。2021年からは社内のペーパーレス化への取り組みを本格化する予定だ。備品の購入申請など、紙伝票が100種類ほど残っている。
--「2020年中に日立ソリューションズ東日本にベースとなるフローを作成していただいて、それを流用して承認フローを自社内で作成していきます。もちろん、帳票画面も社内で作成します。これで削減できる帳票は15,000枚になりますし、起票から承認までのリードタイムが最大5日短縮可能となります」と直近の抱負を千葉氏は語る。
政府が音頭を取って進めている脱ハンコにも積極的に取り組む。ハンコを押すために出社しなければならない社員がいるからだ。日立ソリューションズ東日本に対する評価も高い。
--「Fit-ONE導入のころから信頼性のおける企業グループだと感じていましたので、まかせて安心でした。先進的な分散開発も含めて、大変うまくいったプロジェクトだったと思います」と語る。さらに、トヨタグループ内での導入にも期待を寄せている。
--「各社で導入も進めています。できれば、グループの標準基盤として皆で使って意見を出し合い、品質を向上していきたいと思います」と取材を締めくった。
社名 |
トヨタ自動車北海道株式会社 |
---|---|
設立 |
1991年2月8日 |
本社 |
〒059-1393 北海道苫小牧市字勇払145-1 |
資本金 |
275億円 (2018年3月期) |
従業員数 |
3,379人 (2020年5月1日現在) |
事業内容 |
自動車部品の製造 |
デジタル化と業務効率化プラットフォーム「AppSQUARE」
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