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01

電力制御機器操作の
DX化で安全性と正確性の
飛躍的な向上に挑む。

ある電力会社では、電線に流れる電気のON/OFFを切り替える電力制御機器の操作作業がアナログかつ、拠点ごとに平準化されていないことが課題となっていました。電力制御機器操作業務のDX化を行い、業務の効率と安全性を高める。そんなプロジェクトのパートナーとして白羽の矢が立ったのが日立ソリューションズ東日本です。ここでは、プロジェクトの前半でPM(プロジェクトマネージャ)を担った佐藤さんと、後半からPMを引き継いだ小室さんが、本プロジェクトの苦労ややりがい、得られたスキルについて語ります。

  • 小室 雅斗Masato Komuro

    社会基盤ソリューション事業部
    社会基盤ソリューション第二本部
    ソリューション第一部
    第二グループ
    技師(主任)
    2016年⼊社

  • 佐藤 快Kai Sato

    社会基盤ソリューション事業部
    社会基盤ソリューション第二本部
    ソリューション第一部
    第三グループ
    技師(主任)
    2003年⼊社

都市・郊外・山間地帯。
あらゆる現場へ足を運び、業務を分析。

電力制御機器は、電線工事や電力事故の復旧対応等の際に、電流を止めて安全に作業するための制御設備だ。今回のお客さまとなった電力会社では、これまで電力制御機器の操作を、紙の手順書と無線機で伝えられる指示をもとに手作業で行っていた。しかし、悪天候時の紙の手順書の確認や、作業状況のリアルタイムでの情報共有等が安定性に欠けており、ヒューマンエラーによる時間的・物理的なロスが発生してしまうことが問題となっていた。この問題の解決のため、日立ソリューションズ東日本とともに、業務フローや利用システムの刷新に取り組むこととなったのだ。
プロジェクト開始時のメンバーは、窓口役を務めた日立グループの社員と、PMを務めた佐藤の2名。佐藤はプロジェクト開始時の状況についてこう語る。

「PMとして参加したものの、私自身、電力制御機器操作業務への知識はほとんどありませんでした。なので、まずは電力制御機器が使用される状況や現在の使用方法への理解を深めるところから始めました。業務の流れを叩き込むことや、お客さまからニーズや課題をヒアリングすることはもちろん、実際の作業現場に何度も足を運び、業務を目の前で見学。知識的なインプットと、体験的なインプットの両方を重ねることで、少しずつ全体像がわかるようになっていったのです」

知識を深めることと並行して、過去5年間のミスや事故の報告書にも一つ残らず目を通した。そして、それらのミスや事故の原因を洗い出し、問題を解決できる可能性のある技術や機能を当てはめていった。もちろん、この段階では、全てが仮説に過ぎない。その技術や機能は本当に導入可能なのか、本当に業務改善効果があるのか。その検証を行うため、次のフェーズでは、日本語で概念実証を意味するPoC(プルーフ・オブ・コンセプト)という業務に取り組んだ。

「業務分析のフェーズを経て、紙や無線機を用いた手作業ではなく、司令室ではPCを、作業現場ではスマートフォンを用いて作業をするといった方針に固まりました。つまり、デジタルな情報共有と、デジタル技術を用いた安全で効率的な作業へシフトしていくということですね。では、実際にどのような機能を用いてどのような作業フローで進めていくのか。アイデアとしては挙がっていましたが、PoCでは、その実現性と有効性を一つずつ検証していきました」

導入すべき機能として挙がったものにGPSを用いた位置情報の共有がある。従来の方法では、手順書の見間違いや無線報告のコミュニケーション齟齬により、作業すべき電柱を作業員が間違えてしまうことがあったのだ。GPSを導入して、司令室側でも位置情報を把握すれば、ミスを減少させることができると考えた。しかし、このGPS機能の検証は一筋縄では行かなかったと佐藤は振り返る。

「一口に電柱と言っても、設置されている場所は住宅街や都市、山の中など多岐に渡ります。そのため、どのような土地であっても同精度で機能するのかを検証する必要がありました。1番覚えているのは、『ある街では、道路を走っているのにカーナビの位置情報は海の中に表示される』という噂を聞いたときのことです。『まさか』と思いながらも、噂がある以上、確かめる必要があります。郊外の奥地まで出向き、数百回を超えるGPS測定検証を行い、問題なくGPSが稼働することを確認したときは一安心しましたね」

また、Bluetooth機器による電力制御機器操作のロック解除機能も、今回導入された機能の一つだ。これは、スマートフォンからBluetoothで信号を送り、正しい場所、正しい操作タイミングで電力制御機器側が受信した場合のみ、操作のロックが外れるといった機能である。これにより、作業員の間違いも減り、セキュリティも高まる。この技術の検証の段階から、小室がメンバーとして加わった。

「GPS、Bluetooth、音声認識による機器操作など、今回はIT以外にも、OT(オペレーショナルテクノロジー)を多く導入しました。私たちの部署ではこれらの技術に関する深い知見は持ち合わせていませんでした。そこで、日立ソリューションズ東日本の幅広い部署や、日立グループ内の専門家、外部の有識者の方々を尋ね、知見をお借りしながら検証を進めていきました。多くの方と連携しながら進めていったことも、このプロジェクトの大きな特徴ですね」

未知の業務、数多の土地、新たな技術。これまでの二人の経験と比較しても類を見ないほどの大規模プロジェクトは、次のフェーズに突入していく。

立ちはだかるのは、技術的な壁の数々。
想いを胸に、チーム一丸となり乗り越える。

PoCを終え、導入すべき機能や技術が決まると、次は要件定義に取り掛かった。これは、業務フローに合わせてどのような機能を導入するかをまとめていく工程。この段階からPL(プロジェクトリーダー)に就いた小室は、今回のプロジェクトは、過去に取り組んできたプロジェクト以上に細かな要件定義が必要だったと語る。

「普段私たちが開発するシステムはお客さまのオフィス内で完結するものが多く、業務フローも大抵業務プロセスから想定できるパターンに集約されます。ところが、今回はフィールド業務で用いられるシステムのため、場所や天候等による影響もありパターンはさまざま。また、作業者も、お客さま企業の社員だけでなく、提携している企業の作業員が含まれます。そのため、作業者の属性や作業当日の細かな場面に応じた動きなどを仮定し、複数パターンのフローで定義を行いました」

要件定義を完了した後は、システムの設計に移行していく。設計には、要件定義の内容をもとに、「どのようなアクションに対して」「どのような機能が」「どのように処理を行うのか」をまとめる外部設計と、システム上で行われる具体的な処理をまとめる内部設計がある。ここで壁として立ちはだかったのが、スマートフォンとPCのリアルタイムな情報連携技術だ。外部設計では、スマートフォンで行なった操作は即座に司令室のPCにも連携されることになっていた。ところが、いざ内部設計に取り掛かると、技術的な課題がなかなか解決できない。佐藤は当時についてこう振り返る。

「オフィスで使用されるような一般的な業務システムは、1秒単位でのリアルタイム連携が求められることは少ないですが、今回は数千ボルトの電圧がかかる電柱の上で行う業務のため、瞬時な情報共有こそが安全に直結します。また、無線機からスマートフォンに変えたことで、リアルタイム性が失われてしまったら本末転倒です。絶対にこの課題を乗り越えなければと、チームで力を合わせました」

試行錯誤を重ね、システム設計が完了した頃には、プロジェクト開始から1年半が経過していた。ここから、いよいよシステムの構築に着手することとなる。チーム体制も変更され、佐藤から小室へとPMが引き継がれた。

小室の指揮のもと、外部のベンダーとも連携をしながら開発を進め、さまざまな機能が形になっていく。開発は順調に進み、いよいよお客さま環境での動作テストのフェーズに突入した。ところが、納品間近のこの段階で、新たな問題に直面した。お客さまが保有しているシステムとの連携に不具合が発生し、仕様変更を余儀なくされたのだ。プロジェクト佳境での一大事を、小室はこう振り返る。

「プロジェクト終了間近だったため、納品日を変更することはできません。限られた時間内で、どのように作業を進めていくか。PMとして、チームリソースやコストを鑑みながら対応していきました。また、対お客さまの観点ですと、電話やWeb会議、対面での会議などを駆使して、迅速かつ正確に仕様確定に向けて進行していきました」

細かなチーム管理と、迅速なコミュニケーション。この二つを徹底することで、土壇場での仕様変更を乗り越えた。そして、プロジェクト開始から約3年。ついに、納品の日を迎えることとなった。

お客さまのDX化を通して
住民の方の生活基盤向上にまで貢献。

プロジェクト開始時から、お客さまと綿密なコミュニケーションを取り、想いを共有してきた佐藤。納品を迎えたそのとき、何を感じたのだろうか。

「作業現場に何度も足を運びましたが、その都度『こう改善されると嬉しいですね』『こんな風にはできないですか?』と熱い想いを伝えていただけたのです。だからこそ小室さんから納品の報告を受けたときは、『これで、皆さんに喜んでもらえる』と嬉しさが込み上げました」

本プロジェクトが初めてのPM稼働となった小室は、ここがキャリアの大きな転換点になったと話す。

「これまで担っていたPLは、あくまでプロジェクトの範囲内で進行を管理する業務でした。一方で、PMはお客さまとのやりとりに加え、コスト管理や社内の報告会への出席など、システム開発以外の部分にもリソースを割く必要があります。視野を広く持ち、プロジェクトを点ではなく面で管理するという経験は、大きな成長に繋がりましたね」

また、小室はプロジェクトのやりがいについてもこう語る。

「今回のお客さまは電力会社ということで、普段の私たちの生活を支えてくださっている存在です。そんな企業のDXに貢献できたことで、私たち自身も住民の方の生活基盤向上の一端を担えたのではないかと感じています。間接的にでも、誰かの暮らしを支えていると実感できることは、やはり大きなやりがいですね。」

最後にPMとして小室が意識していることは何か。それはお客さまとの協創だと言う。

「システムの納品後は、保守の業務を担っています。やはり現場で使用してみると、うまく行かない点や改善点が浮き彫りになり、まだまだアップデートが必要な状態です。お客さまと連携しながらより良いシステムに改善していくとともに、各拠点への導入も支援し、さらなるDX化へ導いていきたいです」

新たな業務フローの提案とシステム開発を通して、お客さまのDX化と、その先にある住民の方の生活基盤向上へ大きく貢献したこのプロジェクト。この経験を糧に、佐藤や小室、そして日立ソリューションズ東日本の社員たちは、人々の「暮らし」へのさらなる貢献を目指し、歩み続ける。

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