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生産性指標「稼働率と可動率」とは?概要や4つの低下要因、計算手法と評価例

IoT/AIによる工場の見える化コラム

生産の現場において、IoTでデータを収集し、AIや機械学習の技術を使って改善を図る取り組みが多数、みられるようになりました。筆者のまわりでは、つい2~3年前までは超大手製造業の一部ラインで試験的に実施されているようなケースが多かった印象です。しかし最近では、工場全体のスマートファクトリー化、中堅規模製造業での導入、というように適用範囲が広がってきているように感じます。

これから取り組みを始める場合、改善テーマと目標の設定から入り、そのためのデータ収集方法や機器やIT製品、ベンダの選定という流れが一般的かと思います。本コラムでは、このような検討をされている方々を対象に、製造現場での生産性改善活動にデータを活用していく際のデータ収集方法や分析例などをご紹介いたします。今回のコラムでは、改善事例やテーマのご紹介、データ収集手段をご紹介します。
なお、本コラムでは主に、工作機械や射出成型機、プレス機など、設備を中心とした方法で製造する現場を想定しています。人を中心とした組立製造や、プロセス製造などでは考え方が異なる場合もございますこと、ご了承ください。

生産性指標「稼働率と可動率」とは?

生産性にはさまざまな観点・指標があります。ここでは、設備中心の製造現場で代表的な指標として、稼働率と可動率(べきどうりつ)に着目します。

稼働率とは?

工場や設備の稼働率は、生産可能数に対する実生産数や、標準稼働時間(日数)に対する稼動時間(日数)、という形で評価できます。稼働率は、現場のオペレーションも大事ですが、まずは需要・オーダーが十分にあることが前提になります。需要・オーダーが多いと100%を超える場合もあります。工場操業率と捉えた方がわかりやすいかも知れません。

可動率とは?

べきどうりつと読みます。設備を利用しようとしていた時間のうち、実際に利用可能であった時間で評価します。例えば、ある日に7時間の稼動をさせようとしていた設備があって、そのうち、故障で1時間使えなかったとしたら、6÷7で約85%の可動率です。稼働率とは違い、需要・オーダーに依存せず、また、100%を超えることがありません。製造現場が中心となってコントロールすべき指標です。

可動率イメージ

稼働率、可動率の4つの低下要因

稼働率や可動率を低下させる代表的な要因は以下があります。

計画非稼動、臨時休業による稼働率・可動率の低下

需給バランスが崩れている場合など、経営判断として工場や設備の稼動を意図的に止めることがあります。
これによって稼働率が下がります。(一方、可動率は影響を受けません。)需要にあった生産能力調整、数週間~数か月レンジでの生産計画の最適化などで対応するものになります。

操業中の問題、故障等による稼働率・可動率の低下

設備の破損や故障などで使えない時間です。設備のメンテナンスや点検などで防止していきます。
また、こういったトラブルでは、部品の経年劣化や締め付け固定部のゆるみなどが原因となって、設備が止まってしまう前から異音や振動、サイクルタイムの悪下、歩留りの低下などの形で徐々に兆候が表れるケースもあります。設備異常の兆候を検知し、発生の前に現場へ通知する予兆保全の事例がありますが、これはAIや機械学習の技術によりこのような兆候を検出することで実現しています。

チョコ停、オペレータ待ちによる稼働率・可動率の低下

ワークのズレや充填材料切れなどでの停止、また、設備の自動運転による加工が完了しワーク取り出しなど人の介在が必要になって待っている時間です。数分から十数分程度など短時間で、日に何度も発生することから、チョコ停とも呼ばれます。現場の方からは「なんとなく多くて課題に感じている」という声をお聞きします。
しかし、程度が軽く頻発することから、正確に記録・データ化されず、実態が計測・定量化されていないため、改善の対象としにくいものとなっています。作業方法の改善で発生を抑止したり、発生した場合にすぐに気づいて対応を開始できるようにするなど、現場の改善で短縮することが可能です。

段取替えによる停止による稼働率・可動率の低下

専用ラインではなく、汎用設備・ラインで複数品目を作っている現場では、次の品目をつくるために設備の設定やワークの設置、治具や材料の調整などが必要です。また、始業時や昼休み明けなど、温度等の製造条件が整うまでに一定の時間を要する場合もあります。特に多品種少量生産で、生産計画が適正化されていない場合には、この時間が多くなる傾向があります。数日から数週間のレンジでの生産計画として納期や稼動時間、段取り回数をバランスさせていきます。

稼働率・可動率を計算するときに必要なデータと評価例

それでは、稼働率や可動率の算出に必要なデータや、その計算・評価の方法の例をご紹介します。

稼動実績データ

時間ベースで評価するには、設備ごとの稼動実績データが必要です。最低限の項目としては、設備、稼動ステータス、開始時刻、終了時刻です。例えば、加工1号機が09:00から11:00まで自動加工、11:00から12:00まで異常停止、といった内容です。

基準時間データ

評価の基準とする時間は実績データからはわかりませんので、あらかじめ、操業日数や1日あたりの稼動可能時間を決めておきます。

稼働率・可動率の計算と評価

非常にシンプルなデータですが、これだけあれば設備ごとの稼働率や可動率を計算できます。個々の設備を積み上げていって工場全体のサマリーとしての稼動評価も可能です。さらに稼動ステータスに加え、その詳細(理由・原因・区分)がわかるようになっていると、改善策の検討に有効です。特に異常停止があったときは、設備でどのようなエラーやアラームが発生していたのかがわかれば、発生しやすいエラーやアラームから優先的に防止策を決めていくことができます。

簡単ですが、計算例は以下のようになります。

稼働率・可動率の計算と評価イメージ

この日については9~18時まで昼休みを除くと8時間を稼動させていたので、稼働率は8時間÷7時間で約114%。8時間の内、1時間は異常停止だったので、生産に使えていたのは残りの7時間で、可動率は7時間÷8時間で約88%。稼働率が100%を超えており一見、良さそうに見えますが、実態としてはトラブルがあったために可動率が下がっており、それをカバーするための残業で稼働させたのではないかと推測評価できます。
停止時の詳細として温度異常エラーだったとありますので、これを防止したり、発生した場合でもすぐに作業担当者が対応できるようにすれば、可動率の改善につなげられます。

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