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日立ソリューションズ東日本

テクニカルレポート第16号

2013年1月1日までに発表された論文については、本文中の記載が旧社名になっております。ご了承ください。

金融商品時価会計対応システムの開発

2008 年3 月に企業会計基準委員会より公表された金融商品に関する会計処理の改定により,2010 年3 月31 日以降終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から,時価情報の開示の対象範囲が拡大された。これを受けて,(株)日立製作所と(株)日立東日本ソリューションズは,地方銀行向け時価会計対応システムを開発した。本システムでは,マーケットニーズやトレンドを反映し,「期待キャッシュ・フローアプローチ」方式等,時価の算出手法の充実を図っている。

工程管理ソリューションSynViz/SD の開発と今後の展開

(株)日立東日本ソリューションズ(以下,日立TO)は,システム開発向けプロジェクト工程管理ソリューションとして,SynViz/SD を開発,販売している。 SynViz/SD は,(株)日立製作所の情報・通信システム社情報システムソリューション部門(以下,(情報)日立)と(株)日立製作所の情報・通信システム社関連の日立グループ各社(以下,日立グループ)に最初に使っていただくことを方針とした。特に工程管理業務で重要な「プロジェクトWBS の作成業務」,「大中小日程計画間の調整業務」,「進捗基準にしたがった進捗管理業務」については、(情報)日立を中心に活用されている「工程管理ガイドライン」にしたがい,効率良くプロジェクトの工程管理業務が遂行できる機能を開発した。(情報)日立と日立グループでの適用実績,適用ノウハウをSynViz/SD にフィードバックしていくことで,日立グループ以外のシステム開発部門を持つ企業への販売も狙えると考えている。

リアルタイム津波浸水予測システムの研究と展望

2004 年に発生したインドネシア・スマトラ島沖地震によるインド洋大津波, 2010 年2 月に発生したチリ地震による津波など,世界各地では地震,津波災害が毎年のように相次いでいる。これまでにも,日本でも多くの地震,津波災害を受けていて,地震・津波などの自然災害の被害軽減のための技術開発が進められてきた。その中の一つが津波シミュレーション技術である。津波シミュレーション技術は,東北大学で開発された技術であり,日本では気象庁により運用されている津波警報システムで活用されているだけではなく,インド洋大津波以降は被災した各国からの研修生を受け入れて技術移転が積極的に進められている。そのようななか,(株)日立東日本ソリューションズでは,長年取り組んできた科学技術計算分野でのシミュレーション技術等のノウハウをベースとした社会貢献と事業化を目指し,2002 年度より東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センターとの共同研究を開始し,新たなリアルタイム津波浸水予測システムの研究開発に取り組んできた。本稿では,システム開発の過程と展望について述べる。

階層回帰モデルとベイズ推定によるPOS データの分析

食品スーパーの戦略的マーチャンダイジングを支援するために, 戦略的な価格設定の基礎となる価格弾力性を分析した。交叉価格弾力性も考慮して分析するために, 過学習を回避するのに有効なベイズ推定を用い, 階層回帰モデルとベイズ推定によるプロトタイプシステムを開発した。日配品の週次データを分析したところ, 有意な交叉価格弾力性は確認できなかった。日配品は価格変更が日単位で行われるため, 週次データでは変動が顕著に現れなかったことが原因と考えられる。またサンプル外データに対する予測精度を検証したところ, 最小二乗法と同程度であった。今回は分析精度の向上に有効な商圏情報が得られず, 最小二乗法と同じ条件となったためと考えられる。今後は, 今回のモデルを改良し, 時系列構造解析の枠組みで日次データを分析することでこれらの課題を解決し, 戦略的マーチャンダイジングを支援するシステムを実現したい。

食品安全分野への定量的リスク分析技術の適用

人の健康に影響を及ぼす食品リスクを低減することは世界共通の課題であり,食品安全分野でのリスク分析の研究・実践が近年,国内外で活発に行われている。(株)日立東日本ソリューションズは,この食品安全分野に対して,定量的リスク分析の技術を適用し,分析ツール,教育,研究開発,コンサルティングサービスを通じて提供している。食の安全性を確保するための基準やルールの設定に科学的根拠が求められていることから,今後,定量的リスク分析のニーズは益々高まることが予想される。食の安全に寄与すべく,国内外の先進事例や研究を調査しながら,今後も有効なソリューション提供に努める。

都道府県におけるIT ガバナンスの確立と共通基盤設計に対する考察

地方自治体において,IT 投資の最適化の動きが活発になってきている。なかでも,中央省庁と市町村の間に存在する都道府県では,IT 利活用のメカニズムを組織の中に確立するIT ガバナンスと,利活用を支える受け皿としての共通基盤の実現が必須と考えている。本報告では,2008 年度より受注し,2010 年度も継続して対応しているIT 投資の最適化に向けたコンサルテーション事例をベースに,都道府県におけるIT ガバナンスの確立と共通基盤設計に対する考察を行う。
今回のコンサルテーション事例では,発注を担当する所管部署側の視点から調査することで,都道府県に内在する調達プロセスの課題を検討している。その課題認識から計画した調達基準の標準化やルール作成,さらには共通基盤設計を含めた全庁のIT 予算策定に踏み込んだ支援作業を実施している。

SaaS 向けセルフ・カスタマイズ機能

クラウドコンピューティングの中でソフトウェアをサービスとして提供する形態のことをSaaS と呼ぶ。従来のソリューションを中心とした顧客システムの構築事業からSaaS によるサービス提供事業へ移行するには,セルフ・カスタマイズの実現が技術的な課題の1つである。セルフ・カスタマイズとはユーザ自身がユーザの業務に合わせてサービスをカスタマイズできることである。また,SaaS はグローバルな利用が想定されるため,単一サービスでの多言語対応も課題である。本報告では業務向けソフトウェアのSaaS 化を想定し,運用時にユーザが利用している画面上から直接操作を可能とするカスタマイズ方式を提案する。さらに,ユーザのカスタマイズ操作が他ユーザのサービス利用を妨げない工夫も取り入れる。プロトタイプの作成と試行運用による評価の結果,提案方式がSaaS 向けのセルフ・カスタマイズ方式として有効であることを確認した。

組込みビジネス拡大への新たな取り組み

組込み市場は社会インフラの高度IT 化にともなって急成長を続ける。このような社会状況下で,(株)日立東日本ソリューションズの組込みビジネスの拡大が望まれる。拡大する組込み市場でさらなるビジネスを獲得するためには新たに競争優位性のある技術と組込み技術を持った人材が必要となる。そこで,新しい技術の研究対象としてITRON 仕様OS とユーザインタフェースを選定し,組込みGUI ライブラリの試作を開始した。この試作を通し,ビジネスの競争優位性を高める技術を開発するとともに,組込み向けOS やミドルウェアの人材育成を図る。

CoreExplorer を活用した故障情報分析ソリューション事例

製造業であるA 社では,日々寄せられる製品の故障情報を電子化し社内のデータベースに蓄積している。蓄積したデータはデータマイニングの手法を用いて分析を行っているが,故障情報に含まれる自由記述文章は定型でないため,集計できず分析を行えていないのが現状である。そこで,自由記述文章を自動分類するため,テキストマイニングツールであるCoreExplorer・VOCAnalyzer の導入に至った。
本報告ではA 社で開発している故障情報分析システムにCoreExplorer と VOCAnalyzer を導入した事例について紹介する。

SCM 診断ツール適用による業務課題の抽出

SCM(Supply Chain Management)改善プロジェクトの初期段階では,現状把握に基づいた課題の整理が求められるが,効果的な課題抽出は次のような点で容易ではない。第一にSCM は販売,物流,製造など関連する業務が多岐に渡るため,サプライチェーン全体を俯瞰した幅広い検討が求められる。第二に,検討すべき内容はSCM 運用の成熟度によって異なるが,成熟度を判断する客観的な基準設定が難しい。第三に,解決すべき課題について多様な組織に属する関係者の合意を得ることが難しい。網羅性と客観性の高いSCM 診断ツールは,上記のような初期段階の検討の質を高める上で有効と考えられる。そこで, SCM に関する業務課題を抽出するためのSCM 診断ツールとして LSC(Logistics Scorecard)を採用し,その効果について検討した。

製品利用条件を考慮した部品寿命分布による保守部品需要予測と生産意思決定

多くのメーカは,製品の製造終了後も長期間保守部品を保有する。一方,部品の旧式化は早まり,保守部品の生産は保有期間の序盤や中盤で打切られている。メーカは,生産打切りに備えて部品の作りだめを行うが,欠品と過剰在庫の両方を発生させないように生産量を決定する必要がある。そこで,生産打切り以降の生涯部品需要を高い精度で予測する手法が要望されている。従来,保守部品の生涯需要予測では,製品の市場残存率や部品故障率,メーカでの部品交換の発生率を推定する予測モデルが利用されている。しかし従来モデルでは,製品利用条件の違いによる部品寿命のバラツキを考慮しておらず,実用的な精度で予測できない場合が多い。本稿では,部品寿命のバラツキを寿命分布とγ分布の混合分布で表した予測モデルを提案する。あるメーカの実データを用いて提案モデルの予測性能を評価した結果,従来よりも高い精度で予測できることがわかった。

経験分布を用いた保守部品の生涯需要予測

近年,製造業では新製品の投入間隔の短期化などにより部品の生産打ち切り時期が早期化している。そのため製造メーカは,製品出荷開始から2~3 年後に,将来10~20 年に必要となる部品をまとめて調達しなくてはならない。その結果,需要がまだ増加傾向にある保守部品に対して生涯需要を予測しなければならないケースが増えてきている。しかし,このようなケースでは従来の予測手法が適用できず,担当者が個別に予測をせざるを得ないという課題があった。
本報告では,この課題を解決するため,経験分布に基づく保守部品の需要予測手法を提案する。この手法は類似部品の過去の需要実績から予測値を計算するので,予測する部品の需要実績を必要としないという特徴を持つ。実データを利用して,従来の手法では予測できない需要が増加傾向の部品も,提案手法により予測可能となることを確認した。

PSI 特徴マップによる問題在庫の絞込みと在庫管理

製造業ではPSI(Product:生産, Sales:販売, Inventory:在庫)を可視化するダッシュボードの活用が進んでいる。ダッシュボードでは利用者の役割に合わせ,状況を素早く把握し,かつ有用な気付きが得られる情報の見せ方の工夫が重要である。本報告ではSCM 部門のマネージャのためのPSI 特徴マップ法を考案した。本手法は在庫金額,販売金額,在庫回転率やそれらの時間変化などPSI の特徴量を軸とする散布図に製品をプロットし,多数の製品のPSI 状況を把握できる。例えば在庫金額が増加し販売金額が減少しているなどPSI 管理に問題がありそうな製品群がマップ上に集まって分布する。マネージャはこれを抽出し部下に調査を指示するなど,問題に素早く対応しPSI を適切に管理することが可能となる。

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