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Hitachi

テクニカルレポート第9号

2013年1月1日までに発表された論文については、本文中の記載が旧社名になっております。ご了承ください。

需要予測支援ツールForecastPROをベースとしたソリューションビジネスの展開

(株)日立東日本ソリューションズは、ForecastPROをベースとした需要予測関連のソリューションビジネスの整備・展開を進めてきた。導入前の需要予測トライアルをはじめ、導入時の支援コンサルティングサービス等に対するニーズは、SCM(サプライチェーンマネージメント)分野を中心として、着実に拡大しつつある。ForecastPRO最大の特徴は、専門的な知識を持たない初心者でも、エキスパート選択を用いることにより、一定水準の予測結果が得られる点である。しかし実績データの特性に合わせてどのように機能を活用すべきか、業務運用を考慮して業務にどのように予測システムを組込むべきかについては専門ノウハウを必要とする部分も大きい。このようなニーズに対して「コンサルティングから設計・開発・教育・保守まで一貫した支援」体制で応えている。

不確実性下の供給リスク最適化システムFrontum/SP

供給計画は需要予測にもとづいて立案されるが、正確に需要を予測することは不可能であり、供給計画には不確実性が伴う。本報告で述べる供給計画最適化システムFrontum/SPは利益、機会損失、期末在庫量の標準偏差や信頼区間上下限などをリスクの指標として扱う。これらリスクの指標を解析的に計算するのは困難であるため、モンテカルロシミュレーションによってリスクの評価を行う。さらに遺伝的アルゴリズムを用いてリソース制約を充足しながら、リスクを最小化し、かつ利益を最大化する供給計画案を立案する。供給計画は多目的最適化問題であるため効率的フロンティア上に複数のパレート最適な計画案が存在する。Frontum/SPはこれら複数のパレート最適計画案を一度に立案する。複数の計画案から人間の意思決定者が事業戦略や財務状況に応じて最終的に実行する計画案を決定する。評価実験より、 Frontum/SPが従来手法と比較し優れた計画案を立案することを確認した。

製薬業向け生産計画立案システムの特徴

製薬業界をとりまく環境は近年劇的に変化しており、それに対応するために、適正在庫の確保・最新法規制への対応コスト削減・システム運用コストの削減を目的としたシステムを導入する事例が増えてきている。
製薬業では組立・加工系の生産計画とは異なる特有の要件があるが、こうしたシステム導入を通し、生産計画立案システムで担当すべき機能範囲が他の業種向け生産計画立案システムと異なることが分かってきた。
本報告では製薬業特有の事情について述べるとともに、計画システムの各機能とシステム構成上のポイントおよび(株)日立東日本ソリューションズが提供する製薬業のための生産計画ソリューションについて報告する。

XMLによるスケジューラとMES連携の実現

製造業では、顧客ニーズの多様化や製品ライフサイクルの短期化により、 多様な製品を短期間で製造することが課題となっており、製造現場の状況変化に即応できるシステムへの期待が高まってきている。このニーズに対応するため、(株)日立東日本ソリューションズの生産計画スケジューラである「SynPLA」と米国USDATA社のMESである「Xfactory」を連携したソリューションビジネスを展開中である。その一環として、中間データにXMLを利用してマスタデータとトランザクションデータを共有することで、 SynPLAとXfactoryとの連携を実現した。両システム間のデータ変換およびデータ配信には、システム間のデータマッピング、データ配信管理等の機能を持つMicrosoft BizTalk Serverを適用し、従来よりも少ない工数でのシステム連携を可能とした。

SCMソリューションへのSCOR適用

SCM(Supply Chain Management)には、サプライチェーン(SC)上の複数の組織、部門(プレイヤー)が関係する。異なる環境におかれる各プレイヤーは、顧客、経営、トランザクションレベルの各視点から、自社の強みと弱みを分析し、他社との差別化を図るため、対象となるSCプロセスに適用する施策の優先順位をつけ、これを迅速に遂行しなければならない。SCOR(Supply  Chain Operations Reference-model)は、SCプロセスの評価・分析に有効な参照モデルである。SCORを適用したSCMプロジェクトでは、SCプロセスの効率的なモデリング、可視化、情報共有が可能になり、経営課題や成功要因の評価・分析、戦略的なSCの構築案の策定を共通の枠組みで効果的に実現できる。このため、SCORは業務およびシステムの両面から、SCMの改善・改革プロジェクトの効率化に貢献する。

故障シミュレーションと遺伝的アルゴリズムによる設備保守計画の最適化

鉄道、電力、航空会社などでは、設備の故障が発生すると復旧作業や利用者への補償に多額のコストが必要となる。このため必要以上に定期保守が実施される傾向にあった。しかし近年の不況からコストの削減が求められ、適正な定期保守の実施が望まれている。そこで不確実性下の保守コストとリスクの定量的評価と、評価をもとにした保守計画最適化の研究を実施した。本研究では保守計画のコストとリスクの評価にモンテカルロシミュレーションを用いた。設備の故障をワイブル分布によってシミュレートした。また、保守計画の最適化には遺伝的アルゴリズムを用いた。
鉄道会社のデータをもとに作成したテストデータによる評価で、本研究で提案する保守計画立案手法が優れた計画を立案することを確認した。

並列化プログラム自動生成システムの開発

社会の様々な分野で重要な役目を担っている科学技術計算では、高速化の手段として並列化が重要な要素である。共有メモリ型計算機でユーザがプログラムの並列実行を実現するには、原始プログラム(ソース)中に必要な並列化の内容を記述する方法、またはコンパイラの自動並列化機能を使用する方法がある。両者には一長一短がある。(株)日立東日本ソリューションズが開発を担当した、(株)日立製作所の製品である「PPGEN(Parallel Program Generator)」は、両者の長所をあわせもち、並列化でのユーザの負担を軽減するというコンセプトでリリースされた。本報告では、PPGENの強力な並行化機能およびその性能について述べる。

情報探索システム"CoreExplorer"を利用したテキストマイニング事例

テキストマイニングとは、大量の文書中のテキストから有用な情報を抽出する技術のことである。近年では、コールセンターに寄せられる顧客の声の分析などに用いられ始めている。
しかし、有用な情報が抽出されたかどうかの判断は分析の観点に拠って異なる。すでに様々なテキストマイニングのツールが存在するものの、対象データを様々な観点で簡単に分析できるシステムを求める声は多い。
本報告では、検索結果として文書のタイトルと文書を特徴付ける特徴語を自動的に出力する情報探索システム"CoreExplorer"を利用したテキストマイニング事例について報告する。
"CoreExplorer"は、文書の本文中の単語や属性を利用して分析対象を細かく指定したり、様々な観点で絞り込んだ分析を行うことが可能である。分析対象から抽出する情報は、特徴語同士の関連や文書同士の関連、特徴語と文書の関連の情報である。また、抽出する特徴語として文章の個所・属性等を選択することもできる。本システムを適用した2件の事例から、本システムが顧客要求にあった動作をしていることを確認した。

知識交流システムinxsによるプロジェクトマネジメント事例

近年の情報システム開発プロジェクトの特徴は短納期で高品質システムを構築することである。このためには、プロジェクト・チーム内でのコミュニケーションを確実にすることと、プロジェクト・メンバ以外の人の知識および知恵を活用することが重要である。これらを支援するツールとしてナレッジマネジメント・システムに着目し、知識交流システムinxsを開発した。本システムをプロジェクト・マネジメント支援ツールとして適用した結果、他プロジェクトのメンバからの情報活用が50%となり、プロジェクト間の知識交流を促進することができた。

電子メールシステム構築ツールキットeMailKit

(株)日立東日本ソリューションズ(旧社名:日立東北ソフトウェア(株))が1998年に発売したSMTP/POP3対応メール送受信用ActiveXコンポーネント「InternetPost for Active Platform」に対する国際化対応ニーズの高まりを受けて、上位製品としてWindowsプラットフォーム上で電子メールシステム構築ツールキット「eMailKit」を開発した。
eMailKitは国際化に対応したメッセージ生成・解析エンジンを核とする電子メールシステム構築コンポーネント群である。機能・性能・安定性・カスタマイズ性に優れ、多様化するビジネスユーザのニーズに対応したプロフェッショナル向けの製品である。eMailKitを利用して、電子メールの最新標準に対応したインターネットメールのメッセージを生成・解析する高品質なアプリケーションを構築できる。

金融機関におけるディザスタリカバリシステム構築事例

情報システムは企業活動の中枢的存在に変化しており、今後ますます、その依存度は高まる方向にある。昨今では大規模なシステム被災事例も発生しており、不測の事態に備えた災害対策を講じる必要性が指摘されている。特に金融機関においては、災害時にも確実なデータ保護と迅速な業務継続が実現できるオフサイトバックアップシステム(遠隔地バックアップを用いたディザスタリカバリ(災害時復帰)システム)の検討が本格化している。
本報告では、金融機関でのディザスタリカバリ構築事例として、ディザスタリカバリシステムを実現する上での課題を整理し、顧客要件・業務特性に応じたディザスタリカバリシステム方式の検討・評価・採用までの経緯について紹介する。

材料研究用第一原理計算プログラムMixedBasisの紹介

ナノテクロジーとは、ナノメートル前後の領域での原子レベルの物質の挙動を調べて新しい材料を模索する研究分野であり、近年、特にフラーレンやカーボンナノチューブの発見を端緒として脚光を浴びている。実験に拠らず、計算機シミュレーションによって仮想的な材料を計算機上に創製し、その特性を研究する試みが多くの大学、研究機関、民間企業で行なわれている。
MixedBasisは、東北大学金属材料研究所の川添良幸教授らが日本原子力研究所殿の協力を得て開発しているナノテクノロジー分野の材料設計プログラムである。いわゆる密度汎関数理論と局所密度近似手法をベースとする点においては他のプログラムと同様であるが、電子状態の表現方法において全電子混合基底法という独自の手法を採用することにより内殻電子の寄与を考慮に入れた高精度な計算ができる点に特長がある。(株)日立東日本ソリューションズではMixedBasisをコアとするナノテクノロジー分野にビジネス展開している。

並列計算によるリアルタイム津波情報提供システムの検討

北海道・東北地方は地震・津波の常襲地帯であり、これまでに大きな被害を受けてきた。このような地震・津波災害から地域社会を守ることは、北海道・東北地方を活動拠点とする(株)日立東日本ソリューションズにとっては重要な社会貢献のテーマである。このような背景から、(株)日立東日本ソリューションズでは、東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センター殿との共同研究を実施し、地域を守る新たな津波情報システムTIMINGの実現に向けて取り組んでいる。共同研究の結果、三陸沖などの限られた範囲内であれば、現在の津波警報よりも具体化、詳細化された津波情報をリアルタイムで提供できることが分かった。また、より広範囲に詳細化な津波情報をリアルタイムで提供するためには、計算手法の改良が必要であることが分かった。本稿では、これらの検討過程と計算手法の改良について述べる。

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