「緑」Green
1989年 宮城県美術館所蔵
時代へのメッセージ。
コツコツ歩み
老齢になってしまったせいか、今まで氣にもならずに通り過ぎていた古木を、じっと眺めつくすことが多くなったこの頃です。
風雨と闘い続けながら耐え生じてしまった襞・割れ・瘤・うねりなど、私の中にできてしまった狡さ、多少の誠実さが綯交ぜになって織り成した顔の雛・歪みとの違いを感じられるようになってからです。
ある春、近所の古い桜の下を通ったとき、太い幹の小さな瘤から若葉と二輪の花の咲いてるのを見付け、その生きざまを見せつけられた思いで立ち去れずにいたことがありました。
七十年近く人物を相手に粘土と闘い続けてきたつもりでしたのに、自然が語りかける生命の生きざまが抉り出せず、同じ主題に何度挑んでもその都度跳ね返され続けてきてしまったのでした。私の力不足が自然の深さを抉り切れなかったのです。
私たちの祖先は腰みの一つで石、木を叩き、粘土に願いを込めて心動かす造形を生み出していたのでしたが、私も便利の力を借りずに似た歩みを続けようとしながら失敗の連続でした。
此処まで来てしまったのですが、足裏に少しでも確かな触覚が感じられる日のくるまで、見えにくいゴールを目差しながら、走りもせず、留まりもせずコツコツ歩きながら進み続けようの思いです。
佐藤 忠良
佐藤忠良氏からメッセージをいただき、掲載いたしました。
20世紀はさまざまな科学技術が飛躍的に進んだ世紀でした。とはいえ技術は一朝一夕に向上してきたわけではありません。今日より明日が悪くても、明後日が少しでも良くなれば、大きな流れの中では少しずつ上がっていける。たくさんの人たちがそう考え、コツコツとやってきた積み重ねの結果なのです。そして企業として考えた時に大切なのが、どれくらいの角度でどの坂を上っていくつもりなのかということ。
当社は「グローバル市場への挑戦 ～その先のお客様とも共に～」を経営スローガンとしています。これは東北地域を事業基盤に、世界市場への挑戦という坂を上り続けること。さらに直接的なお客様にはもちろん、そこからつながる皆様へ高い価値を提供していくという道筋を明確にしたものです。またいかに優れた技術があっても世の中の基準に適合していなければ意味がありません。そのために国際品質規格ISO9001の認証を取得。「日本経営品質賞」へも取組んでいます。
技術とそれを支える志しを持って、私たちはさらに一歩踏み出していきたいと考えています。
新世紀もどうぞよろしくお願いいたします。
2001年1月4日掲載 朝日新聞掲載新聞広告より
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